清原果耶にヘヴィな役柄がこんなにも似合う理由 圧巻の最優秀助演女優賞、主演受賞も遠くない

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だが「ファイトソング」はこれまでを踏襲しているだけでなかった。ヘヴィな状況でも清原演じる花枝は顔をあげ、強く明るい。間宮演じる一発屋ミュージシャン芦田を再起させ、菊池演じる幼馴染み・慎吾にも決して弱音を吐かず、さばさばと振る舞う。

ドラマのオープニングで3人が走るとき花枝は先頭を切り、たくましい笑顔を浮かべている。空手シーンでは手足の動きが1つひとつ力強く決まって小気味いい。試合のシーンでは心から競技を楽しんでいる表情がじつに清々しかった。芦田にはじめてキスするときも自分から行く(第7回)。「キスしてもいいですか」と聞いて「え」と戸惑っている間に「します」と空手の技をかけるような素早さとさばさばした態度で、甘い恋愛ものとは趣(おもむき)を異にした。

TVサイズに収まりきらない才能

圧倒的なエネルギーをじわじわとチラ見せするのもいいけれど、「ファイトソング」ではあっけらかんと清原果耶の強さを日常で見せることに成功した。だが、それを見ていたら、清原果耶の才能は日常を描くことがどうしたって多くなるTVサイズではどうにも狭すぎて窮屈なのではないだろうかとも思えてきた。

「モネ」はテーマ的には挑戦的なものとはいえ、いかんせん朝ドラという、朝の支度をしながらたくさんの人たちが見る国民的ドラマという制約のなかではソフトに描かざるをえない部分があり、若干、不完全燃焼な部分もあったと感じる。同じ東日本大震災を題材にした作品としては『護られなかった〜』のほうがより踏み込んでいるし、一見、穏やかに社会生活を営んでいるように見えた人物の心の奥に潜むほの暗さの表出もリミッターを外したものになっていた。

だからこその最優秀助演女優賞である。ドラマでこの域に迫るとしたら、世帯視聴率を度外視して挑戦できるドラマ10枠の「透明なゆりかご」であろう。

清原果耶には『護られなかった〜』レベルの映画に出続けて、俳優として成熟していってほしいと願うものの、ドラマはドラマで意味がある。たとえば国民的番組・朝ドラに出ると知名度がグンとあがって全国区になると言われている。世帯視聴率もほかのテレビ番組に比べると高く、北海道から沖縄まで放送しているため、テレビが主たる情報源の高齢者に知られることで間口が広がりCMなどの大きい仕事が増える。足場を固めることで次のステップに行きやすい。テレビで彼女を知って映画に足を運ぶ人も現れるだろう。

「ファイトソング」が放送されている火曜ドラマも、いま、民放では人気枠で多くの人が見ている。清原と同世代の女性の支持率をあげることでこれまた映画に足を運ぶ人も現れるだろう。そう思うと清原果耶は着々と最優秀主演女優への道を歩んでいる。

木俣 冬 コラムニスト

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きまた ふゆ / Fuyu Kimata

東京都生まれ。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。

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