(産業天気図・繊維製品)IT関連・自動車関連需要で樹脂・化成品が牽引、原料高も価格転嫁進める

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繊維製品業界の大手各社は、IT関連および自動車関連の樹脂・化成品、工業用資材に対する国内・中国の需要が牽引。コスト削減効果も加わり業績を伸ばす企業が多い。とくにデジカメ、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイの増産に対応して、各社の高機能フィルムや樹脂が好調を続ける。また自動車関連では、強化樹脂やブレーキパッド等の部品、さらにシート材や天井材、フロアマットといった内装用材料も好調を続ける。この他、炭素繊維複合材料も国際的な需要回復で値戻しが進み、好採算事業へと転換する。
 一方、この数年間多くの企業で低収益あるいは赤字部門となっていた衣料繊維事業分野においても、回復に向かう見込みの企業が多い。中国などからの低価格品輸入によって、依然として国内減産の傾向は続いている。しかし、不採算事業撤退と高付加価値品への集中、国内工場閉鎖や人員削減、中国への生産移転といった事業再編によって、各社の収益力は徐々に回復し始めている。さらに中国経済の発展を受けて、高付加価値の衣料繊維製品を中国市場向けに本格供給していく企業も出始めている。
 個別企業を見ると、東レは、粗利益率30%超というIT関連の高機能フィルム、炭素繊維などの先端材料が大きく伸び、利益を牽引する。とくに韓サムスングループへの供給を発表した中小型用液晶フィルター事業では、フィルターだけでなく関連資材や生産システムの受注も好調。設備投資については、先端材料を中心に850億~900億円規模の計画を発表している。またグローバル生産による為替変動への対応力も見逃せない。
 帝人は、防護服や自動車部品などに使用される高強度のアラミド繊維、電子関連の高機能フィルム、化成品などが中心となって利益を伸ばす。また医薬部門の骨粗しょう症治療薬などが好調を維持する。さらに臨床開発費の減少によって収益性が向上する。原料高、薬価改定の影響もこなして、営業益続伸の見通しだ。
 三菱レイヨンは、主力のMMA系製品が自動車向けやIT関連向けに好調を持続する。アクリル繊維は前期に原料急騰の影響を大きく受けたが、価格転嫁の浸透が通期で寄与。中国でのアクリル成形材料生産本格化も加わり、最高益更新を見通す。
 日清紡は紙、化成品、ブレーキが堅調に推移。国内リストラ完了の繊維は営業利益増加。さらに赤字続きだったプラズマディスプレイパネル用フィルターが、需要増と新設備効果で黒字に浮上。デニム子会社の建て直しが残るが、最終益続伸の見通しだ。
 懸念材料は、やはり為替相場と原材料価格の上昇だが、昨年来、各社とも影響を最小限に止めるべく、需要家に対し価格転嫁を積極的に進めている。デジタル景気と旺盛な中国需要がどこまで続くのかが、今後のポイントとなる。
【本多正典記者】

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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