くたばれ!就職氷河期 就活格差を乗り越えろ 常見陽平著
この2年間で「就職」「雇用」や「新卒採用」が新聞、雑誌に取り上げられ
ることが多くなった。それ以前の「就活」は、企業、学生、大学という当事者
と、就職情報会社や採用ツール制作会社、そして就活本の出版社で構成される
閉じた業界だった。現在は社会全体の問題として「雇用」「新卒採用」が語ら
れている。
そんな時代の変化を背景にして、常見陽平氏は就活・採活業界の新星として
登場した。初期の著作はいわゆる就活本だった。しかし昨年夏の『就活格差』
では「マスコミの言う就職氷河期の再来は間違っている。起こっているのは就
活格差」と説いて注目を浴びた。
最新作の『くたばれ!就職氷河期』では、さらに分析を進めて「就活断層」
を提議している。
タイトルは『くたばれ!就職氷河期』と刺激的だが、内容は目配りが効いて
いる。経験豊富な採用担当者なら、書かれている現象についての知識はあるだ
ろう。しかし知識はばらばらのままではないだろうか。
本書は一つひとつのデータを整理、分析し、就活で起きている大きな変化を
体系的に解き明かしている。切り口は「就活断層」だ。
まず新卒の人材ニーズだが、本書によれば就職氷河期と呼ばれた時代よりも
仕事の絶対数は増えており、全体の求人倍率でも1倍を切っていない。
にもかかわらず「無い内定」のままの学生が多いのはなぜか?
理由は明白だ。企業は一部の学生しかし採用ターゲットにしていない。ター
ゲット校を設定している企業が33%もあり、うち上位20校以下に絞っている企業
が82%に達している(HRプロ『HR戦略資料2010』)。学生も一部の有名企業しか
受けようとしない。ここに断層が生まれているわけだ。
また男女間格差、地域間格差、学歴格差、学部間格差という個別の断層も生
じている。