親のやせが「子の出生体重」に与える深刻な影響 20代の「5人に1人」がやせている日本の実態

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これらを受け2021年、妊婦の体重増加について新たな指針が発表された。その基準が少し緩やかに改定され、従来よりも体重増加を促す内容となっている。

この指標について杉山氏は、「低出生体重児の予防のためだけではなく、早産や妊娠高血圧症候群などの頻度が下がることなどを鑑み、最新のデータを集めて検討された、お母さんと赤ちゃんにとってリスクとなる事の発生が低くなるための指標」と説明する。

1997年に決定された体重増加の推奨値に比べ約3kg程度の増量となっている。

日本産科婦人科学会周産期委員会 体重増加の推奨値(1997年)
BMI < 18:10~12kg
BMI 18~24:7~10kg
BMI > 24:5~7kg
日本産科婦人科学会 妊娠中の体重増加指導の目安(2021年)
BMI <18.5:12~15 kg
BMI 18.5 ≦ ~<25:10~13 kg
BMI 25 ≦ ~<30:7~10 kg
BMI 30 ≦ 個別対応(上限 5 kgまでが目安)

ファストフードの影響も?

「先進国の中でも日本人女性のやせ願望は特異的。普通の体格の人がもっとやせたいと願っている。そのような食習慣や生活習慣が出来上がっていると、妊娠して『いっぱい食べなさい』と言われても、今まで食べる習慣がなかった人はそんなに妊娠中に食べられるようにならない」と杉山氏。

過体重でも低体重でも将来肥満になりやすかったり、糖尿病になりやすかったりするが、「生まれてからの環境がさらにアクセルをかける。小さく生まれると、『大きくしないと』と一生懸命ミルクを飲ませて、幼児期にもご飯やおやつもたくさん食べさせる。それが結果的に、将来の生活習慣病につながる。逆に言うと、小さく生まれても適切な食習慣や生活習慣を身につければ将来の疾患発症を抑えていける可能性は十分ある」(杉山氏)。

母親の体重などだけではなく、子宮内環境の影響も大きく受ける。最新の研究によると、「1960年代ごろから増加したファストフードなどの影響で高脂質になった。その時期以降に子宮の中にいた人は胎内で変化を受けたので、生まれたあとに過剰に栄養を摂取すると太りやすくなることが知られている。もともとの遺伝子の変異を持っている人もまれにいるが、多くはお母さん自身が胎児だった時の子宮内環境が低栄養か過栄養かにより、成人後の生活習慣病発症のリスクが決まっている」(杉山氏)。

つまり、お母さんが胎児だった頃にどのような子宮内環境だったかによって、すでに次世代の赤ちゃんを妊娠する下地ができているのだ。

まさに、母子のだけではなく、生涯にわたる連鎖、次世代への影響につながっている。

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