ウクライナ侵攻の裏で「サイバー攻撃」応酬の行方 「多国籍ハッカー集団」が続々参戦している

✎ 1〜 ✎ 10 ✎ 11 ✎ 12 ✎ 最新
拡大
縮小

2月28日には、タス通信、コメルサント紙、イズベスチア紙、RBCなどのロシア・メディアのウェブサイトが改ざんされ、「こんな常軌を逸したことはやめてほしい。息子さんやご主人たちを死に追いやらないでくれ」「5300人。これは、ウクライナが主張しているロシア兵の死者数だ」などのメッセージが掲載された。アノニマスのロゴも付いている。

ベラルーシの反体制派ハッカー集団も参戦

2月24日、ベラルーシの反体制派ハッカー集団「サイバー・パルチザン」の広報担当者であるユリアナ・シェメトヴェッツは、「ロシアの独裁者がウクライナへの戦争を開始したため、『ベラルーシ戦術グループ』を作った」とツイッターで宣言した。

このハッカー集団は、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領が大統領選挙で6戦を果たした後の2020年9月から、ルカシェンコ政権打倒と民主主義の獲得を目指して活動をしている。

「ウクライナ人とベラルーシ人の共通の敵は、プーチンとクレムリンと帝国主義的政権だ」と断じ、サイバー・パルチザンは、ウクライナ軍の支援をしているボランティアに協力すると表明した。この「ボランティア」については後述するが、2月24日以降、ウクライナ国防省によって組織されているサイバー・レジスタンスたちを指している。ウクライナ政府の指示に基づき、ロシアからのサイバー攻撃の防御と、ウクライナ軍によるロシアへのサイバー攻撃の支援を行う。

「サイバー・パルチザン」の2月27日の発表によると、ベラルーシの鉄道のシステムに侵入し、保存データの暗号化に成功、一部の鉄道がミンスク、オルシャ、オシポヴィチで運行停止している。データの暗号化ということは、金銭目的ではなく、政治目的達成のためのランサムウェア攻撃だった可能性がある。

今回のサイバー攻撃を行った理由として、同集団は、ベラルーシ国内の基地からウクライナ北東部へのロシア軍の移動を遅らせ、ウクライナ人がロシアからの攻撃に反撃するための時間を稼ぐためだったと主張している。しかし、ブルームバーグによると、サイバー攻撃が成功したとの主張が正しいかどうか確認は取れていない。

なお、「サイバー・パルチザン」がウクライナ情勢に関連してベラルーシの鉄道に攻撃したと主張するのは、2回目だ。ロシアとベラルーシが2月10日から行った合同軍事演習のため、ロシア軍が装備品と部隊をベラルーシ鉄道でウクライナ国境近くに輸送したことに「サイバー・パルチザン」は、反対を表明。1月24日、ベラルーシ鉄道にランサムウェア攻撃を仕掛けたとツイッターで宣言していた。

加えて、1月25日付のイギリス「ガーディアン」紙の取材に対し、「罪のない人々がケガをしないと確信できれば、今後は(鉄道の運行を麻痺させるような)攻撃をするかもしれない」と語っている。1月の攻撃も本当にランサムウェア攻撃だったのかは確認が取れていないが、少なくとも1月からの決意を今回実行に移そうとしたようだ。

次ページロシアのランサムウェア攻撃集団はロシアに味方
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT