ウクライナ侵攻の裏で「サイバー攻撃」応酬の行方 「多国籍ハッカー集団」が続々参戦している

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ロシアが軍事侵攻してきた2月24日、 ゼレンスキー大統領は国民総動員令に署名した。同日、ウクライナ国防省は、民間企業に依頼してオンライン上のハッカーフォーラムに広告を出し、地下のハッカーたちやサイバーセキュリティの専門家たちに、重要インフラ防御とロシアに仕掛けるサイバー攻撃のための支援を呼びかけた。

志願する人たちは、コンピュータウイルス作成やDDoS攻撃など12分野の中から得意分野を選んでGoogle Docの申請書類に記入しなければならない。身元証明書の提出と信頼されている既存メンバーからの推薦が求められる。

選ばれた人たちは、防御チームと攻撃チームに分けられる。防御チームは、電力や水道などの重要インフラをサイバー攻撃から守る。一方、数々のサイバーセキュリティ企業の創設者であるイェゴール・アウシェフ氏がリーダーを務める攻撃チームは、軍事侵攻してくるロシア軍に対してウクライナ軍が行うサイバースパイ作戦を支援する。何を守る必要があるか、何を狙うかは、国防省からの指示に従わなければならない。

アウシェフ氏によると、現時点で、ウクライナ人だけでなく、アメリカ人やイギリス人など500人ほどがウクライナ国内外から参加している。ウクライナ軍事侵攻に反対するロシア人も2、3人交じっているという。なんと、17歳の学生も参加したとのことだ。

アウシェフ氏は、『フォーブス』誌の取材に対し、キエフがたとえ陥落しても、ボランティア・チームは解散せず、ウクライナの防御とクレムリンへの攻撃を続行すると語っている。

ウクライナ副首相も参加を呼びかけ

ウクライナのムィハーイロ・フョードロフ副首相兼デジタル革新担当相は、2月26日、ロシアからのサイバー攻撃に対抗するためIT軍に参加するよう、サイバーセキュリティの専門家だけでなく、デザイナーやコピーライター、マーケティング担当者などのIT人材にもツイッターと無料暗号化メッセージアプリのテレグラムで呼びかけた。

フョードロフ副首相は、「全員に仕事がある。われわれは、サイバー前線で戦い続ける。最初の任務は、サイバー専門家向けの(テレグラム)チャンネルに記してある」とツイート。

テレグラムにできた専用チャンネルには、2月26日時点の標的リストとして、政府機関だけでなく、天然ガス供給大手「ガスプロム」、石油大手「ルクオイル」、銀行3行など31のロシアの官民のウェブサイトが列挙されていた。翌日には、ベラルーシのウェブサイトも追加されている。

ITやサイバーセキュリティ関連のニュースサイト「ブリーピング・コンピュータ」は、「ロシアのウクライナ侵攻の様子をテレビやソーシャルメディアで見れば、IT軍に参加し、ロシアの組織にサイバー攻撃したいと思うかもしれないが、DDoS攻撃、ネットワークやコンピュータへの侵入、ウェブサイトへの侵入などの行為は大抵の国では違法行為である」と指摘。IT軍への参加志願者たちに再考を促している。

このIT軍がどれだけの「成果」を収めるのかは判断が難しい。テレグラムの専用チャンネルには、2月27日時点で17万5000人以上が参加しており、自分が行ったと称するサイバー攻撃についての画像を投稿している。しかし、それらの「証拠」が本物であるかどうかはわからない。

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