韓国ヒョンデが日本再参入「IONIQ5とNEXO」の全貌 デジタルネイティブ世代に訴え独自地位築けるか

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ただし、こちらはカーナビゲーションが未装備で、つまり水素ステーションの場所や営業状況なども取ることができないのはFCEVとしては致命的だ。このあたりは数少ないFCEVをラインナップしている同士、トヨタ自動車と交渉してもいいかもしれない。

いずれもクルマとしての実力に不満はないし、それぞれに魅力もある。そして価格もIONIQ 5が479万円から、NEXOは776.83万円。しかも補助金により前者が400万円台前半から、後者は500万円台後半あたりと、十分納得できる範囲にあるのは間違いない。しかし、それだけではこの日本市場で台数を売っていくのは難しいのも事実だ。

誰に売りたいのか。誰に乗ってほしいのか。まずはターゲットを明確にするべきだろう。デジタルネイティブ世代というのは、まさに世代の話であり、その中で誰に「これは自分こそが乗るべきクルマじゃないの?」と思ってもらえるかが重要になる。

まずはポジションをじっくりと築く必要がある

最初に書いたように、たとえばデザイン推しでもいい。強烈な個性で、他人と一緒ではイヤだという人に意識されるようになるといったあたりが、まず目指すところになるはず。当面、台数はそれほど出ないにしても、まずはそうやってポジションをじっくり築いていかねばなるまい。

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今回の日本市場再参入にはヒョンデ本社、並々ならぬ気合が入っていると聞いた。かつて日本から撤退したときとは違い、今や世界5位の自動車メーカーとなったヒョンデ。市場規模ではまだ世界3位にあり、しかも多くの輸入車が鎬を削る日本に足がかりも築けていないのでは成功したとは言えないという意識が、その原動力になっているという。ゆえに、困難は承知のうえで再参入してきたのである。

新しいプレイヤーの登場で市場が活性化するのはもちろん大歓迎。ヒョンデならではのアプローチで、独自のポジションを築き、ユーザーを楽しませてくれることを期待したい。

島下 泰久 モータージャーナリスト

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しました・やすひさ / Yasuhisa Shimashita

1972年生まれ。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。走行性能からブランド論まで守備範囲は広い。著書に『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)。

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