資生堂社長に試練、「中国不振」に「幹部辞任」 社長交代から約半年、複数の課題が浮き彫り

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

日本国内では昨年度にこの構造を改めている。中国は販社主導の営業活動がまだ残っており、在庫過多という状況にメスを入れるため、引当金を計上した。
 軌を一にして飛び出したのが幹部人事だ。

資生堂は11月10日、中国事業の責任者で代表取締役執行役員専務のカーステン・フィッシャー氏(52)が、来年3月末ですべての役職を退くと発表した。広報部は「本人からの申し出」とするが、「今回の件を受けた引責辞任」(化粧品担当のアナリスト)と見る向きが多い。

フィッシャー氏の役員報酬は、海外売り上げを増やした実績も加味され、過去5年間のうち4年、社長より多い厚遇ぶりだった。が、中国事業の失速で、同氏への風当たりが強まったとみられる。

 課題は中国以外にも

国内外の展開で魚谷社長の手腕が問われる

人事の発表直前、都内で開かれた経営者が集まるイベントで、フィッシャー氏は「(資生堂は)本社が偉いという文化がある」「遊び感覚なので競争に勝てない」などと、まるでひとごとのような発言をしていた。

資生堂の課題は中国事業だけではない。これまで、「ブランドの会社と言いながら、ブランド別、チャネル別の収益管理が日頃できていない。情報がない」(魚谷社長)という状態だったからだ。この10月から、主要ブランド別の損益を月次で把握できるようにしたが、コーセーや花王傘下のカネボウ化粧品は、同様の取り組みを約3年前から行っている。ある競合幹部は「ようやく資生堂もやるのか」と冷ややかに語る。

10月31日の決算説明会で魚谷社長は「来期、再来期、いい業績数字を作るつもりはない」と断言。自身の任期中は収益構造の抜本的な転換を図るため、先行投資を徹底する考えだ。老舗企業をどこまで変えられるのか。その肩に重責がのしかかっている。

(撮影:今祥雄)

「週刊東洋経済」2014年11月22日号<11月17日発売>掲載の「核心リポート06」を転載)

二階堂 遼馬 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事