チームの業績を引き上げる、2つの秘策とは? 脳の「ワーキングメモリ」を活性化させよう

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ITを利用することによって、ワーキングメモリの使い方が、大きく変わりつつあります。かつては、次に会うクライアントに関する情報や数字を事前に記憶しておく必要がありましたが、今はグーグルなどを利用することによって、そうした情報はすぐに検索できるので、あらかじめ覚えておく必要はない。

その代わりにワーキングメモリを、この潜在的なクライアントとどのように関係性を築くか、そのために効果的なプレゼンテーションとは何か、という方向にフル活用できる。ITを駆使すれば、ワーキングメモリは、よりクリエイティブな分野に使うことができるのです。

――IT機器を子供に使わせると弊害がある、と考える人もいるようです。何歳からスマートフォンを使わせればいいのでしょう。

使用目的によります。例えばiPadを使ってテレビ番組や映画を見せるということであれば、3歳以下の子供に対してはワーキングメモリの向上には貢献しないため、支持できません。

実際、ある研究では3歳以下の子供に1時間テレビを見せることによって、7歳児になった場合にADHDなどの学習障害を起こす可能性が10倍になるという結果が出ています。一方で、iPadやスマートフォンを学習目的で使うのはいいと思います。つまりテクノロジーをどういうふうに使うのか、その使用目的によって評価は異なると思います。

SNSはワーキングメモリにプラス効果

TracyAlloway,Ph.D.●ノースフロリダ大学心理学教授。元スターリング大学障害記憶・学習センター所長。ワーキングメモリと教育に造詣が深く、国 際的に高く評価されているAWMA(アロウェイ・ワーキングメモリ・アセスメント)を開発した(撮影:尾形文繁)

――LINE、Facebookのようなソーシャルメディアはどうでしょうか。

16歳の高校生200人を対象にFacebookの利用状況を調査したところ、6カ月以上Facebookを使っている高校生は、それ未満の学生よりもワーキングメモリも成績も高いということが分かりました。

言語能力がSNSを使うことによって向上すると考えられています。多量の情報がニュースフィードに流れてきた際、その情報を瞬時に優先順位付けする能力が鍛えられることも、成績に関係していると考えられます。そういう意味ではSNSの利用は、ワーキングメモリを鍛えることにつながっていると思います。

――ということは子供がSNSを使うのは、おすすめですか。

教育関係者からそのような質問を受けることが多いのですが、ワーキングメモリを鍛えるという目的のためにSNSを使用することは推奨していません。SNS以外にも、ワーキングメモリを強化する手段は、集中した学習、素足でのランニングなどたくさんあります。

――ワーキングメモリの観点から、ビジネスチームをよりパワーアップするためにできることとは、何でしょうか。具体的には、東洋経済オンラインの編集部を活性化するために今日からすぐやれることはなんでしょう?

すぐにやれることは2つです。2つの「ワーキングメモリ・キラー」を排除すればいいのです。1つ目のワーキングメモリ・キラーは、マルチタスクです。ドライビングシミュレーターをやっている最中に、計算式などの問題を投げ掛けると、すべてにおいて成績が落ちます。つまりジュニアスタッフに対して、あれもこれもやるように指示をしてはいけません。マルチタスクを与えるのではなく、フォーカスしてやってくれてと伝えるべきです。

もちろん簡単ではありません。私自身も、学生に対して授業をする時に、あれもこれもと欲張ってしまいがちです。でも結果的にはパフォーマンスが悪くなるので1つのものに集中したほうがいいのです。

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