たばこ規制は後回し、大増税が抱える矛盾
大幅値上げの恩恵 利益は1箱30円増
国の対策が後手に回る一方で、JTの目線は次なる成長へ向かう。
増税を目前に控えた9月末、JTはサンクトペテルブルクとモスクワにあるロシアの主力工場に機関投資家を招待した。海外市場の成長力をアピールするのが狙いだ。ロシアは、JTが現地企業を次々と買収してきた有望市場。成人男性の喫煙率は約6割と高く、積極的に設備投資を進めている。片や国内に目を向けると、10月以降の年間販売本数は前年比25%減の見通しで、環境は厳しさを増しているかに見える。
が、市場関係者の見方は180度異なる。ジャパンインベストの大和樹彦リサーチパートナーは、「今回の増税はJTが海外メーカーと肩を並べる好機」と評価する。「1本当たりの営業利益は増税前は1円台で、値上げにより1・5円程度増加。1箱当たり約30円の利益増になる」と試算する。増税に伴う需要減を値上げで補う戦略はメーカーの常套手段で、他の先進国でも実施済みだ。これに日本特有の“たばこ販促”を組み合わせれば、需要減に多少の歯止めをかけられるかもしれない。
JTは国内工場の再編も進めており、03年度の25工場体制から、10年度末に6工場へ縮小させる。今後の需要次第ではリストラが一段と加速する可能性も示唆しており、日本でも十分に成長可能だ。
着々と戦略を転換するJT。あの手この手の販促が、喫煙率低下の妨げにもなりかねない。政府が「健康増進」を掲げる一方で、たばこ業界による販促が活発化するという矛盾を日本は抱えている。本来の目的を果たすためにも、増税と規制を両輪で行うべきだろう。
(麻田真衣 撮影:今井康一 =週刊東洋経済2010年10月9日号)
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