堀江貴文氏に聞く、「家族」と「会社」の意義 なぜ人は組織におさまりたがるのか
なぜ家族は組み替えてはいけないか
――そうすることが合理的だったのでしょうか。
合理的というか、そうせざるをえなかったんだと思いますよ。一夫一妻制の結婚制度で家という概念を作り出して、そこで子供を産んで、その子が年老いた親たちの後を継いで農業生産をしてくれるっていう。それがないと、畑を耕せなくなって飢え死にですから。
昔はたぶん50代とかになったら隠居していたでしょう。今みたいに栄養状態もいいわけじゃないし、感染症のリスクもある。だからたくさん子供を作って、その子たちを働かせて自分たちは隠居みたいな、そういう流れですよ。
でも、自分のところの息子が器量よしじゃなかったら結婚できないわけですよ。自然の摂理に従ったら、体力のないやつはモテなかったとか、たぶんいろいろあったと思うんですけど、農業生産が始まってからはそうはいかなくなった。だから誰でも結婚できるようにして、子供も作れるようにしたわけですよ。
――親も子も食べていくために、結婚という慣習が生み出されたと。
つい最近まで、好きでもないやつと無理やり結婚させられることもあったじゃないですか。みんな嫌だ嫌だと思いながら、でもこうするほか生きていく方法がないと思ってしていたわけです。女手ひとつで生きていくわけにもいかない。もう即、飢え死にですから。女郎屋に行くぐらいしかなかった時代もあったわけですよ、昔は。
そうして道徳や社会的な倫理みたいなものが生まれた。でも実は現代は、農業生産から人間は解放されているのです。本来そうしなくてもよくなっているんだけど、やっぱり長年続いてきた伝統だし、みんな何も考えずに、本来の目的はなくなっているのにその考え方を受け入れている。
みんな、「なんで結婚しなきゃいけないんだろう」って考えないんですよね。なぜ家族に血縁関係が必要かとか、考えないじゃないですか。昔に作られた家族の概念は、実は現代にはそぐわなくなってきているんですよ。
――旧来からの家族制度そのものが、今の時代に合わない。
そうです。だからちょっとドラスティックな言い方をすると、僕にとっての家族とは、今の付き合っている友達だったり、一緒に仕事をしている人たちだったりすると思っているのです。いちばん長い間過ごしているし。家族のポートフォリオ(構成)も時期によって変わるんじゃないかなって思っています。
――血縁だと組み替えはできないけど、友達や仕事仲間だと組み替え可能で、その時々の関係でよくて、つねに最適の組み合わせが考えられるというわけですね。
そう思います。だから僕はもう一般的に言われる家族とか、面倒くさいんで作らない。(家族を作るのは)これはよくねえな、無理だなと思ってます。結婚も何がいいのかさっぱりわからないですね。
何を恐れているんですか?
――前の著書『ゼロ』の最後で触れていましたが、43歳になると会社法の縛り(編集部注:会社法第331条第1項。証券取引法違反などの罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、またはその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者は取締役になることができない)がなくなるそうですね。それ以降活動の幅が拡がりそうですか。
いや別に、そこの部分に関して言うと、ぶっちゃけ何も変わらないですよ。先のことを考えないって言いましたけど、なんで43歳まで待たなきゃいけないのかもわからないっていう。
たぶん、そういうのは周りの人たちが気にしているんでしょう。なんか本当、みんなヒヤヒヤしているんですよね、僕とかかわることについて。何かアドバイスはもらいたいけど、一緒に仕事はできないとかね。何言われるかわからないからでしょうね。
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