会社員の「脱サラ起業」が失敗しがちな根本的理由 「退路を断つ」よりもっと大事なことがある

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筆者も似たことをよく経験する。考えが行き詰まると、作業をやめてまったく関係ない映画を観て気分転換すると、新しいアイデアが次々と湧いてくるのだ。

(出所:『世界の起業家が学んでいるMBA経営理論の必読書50冊を1冊にまとめてみた』)

ワービーパーカーも同じだろう。「メガネのオンライン販売は誰もやっていない。先を越されないうちにすぐやろう」と考えがちだが、4人の創業者は焦らずじっくり時間をかけて何度も話し合いを重ねた。アイデアを熟成させてリスクを下げたのだ。そうして彼らが話し合ったもののひとつが、ビジネスモデルだ。

当初、彼らが考えていたのが「無料返品」。「オンラインでメガネが買いやすくなる」と考えたのだが、聞き取り調査で「無料返品では買う人はいない」とわかり、すっかり落ち込んでしまった。

起業で必要なのはいちばん乗りになることではない

ようやく立ち直って4人でさらに話し合い、思いついたのが「無料試着」。顧客が自宅で数種類のフレームを試着して、ひとつ選び、試着したフレームを送り返して、選んだフレームにワービーパーカーがレンズを入れる、という仕組みだ。これが好評を博し、注文が殺到して営業開始後48時間で販売停止になるほどだった。さらに返却されたフレームは再利用できるので、購入後にレンズ入りフレームを無料返品されるよりも低コストになった。

ちなみに、多くの人は先発企業になりたがる。しかし先発企業は不利だ。先発企業と後発企業で、失敗率の違いを比較した研究がある。失敗率は、先発企業が47%、後発企業は8%。生き残った場合の市場占有率は、先発企業が平均10%、後発企業が平均28%。先発企業は後発企業よりも失敗率が6倍高く、生き残ってもシェアは3分の1に留まる。

起業で必要なのはいちばん乗りになることではない。市場の準備が整うのを待つことだ。iPhoneのように先発企業が成功することもあるが、確率的に言えば後発のほうが圧倒的に有利だ。先発者は未知の分野で試行錯誤して学ぶ必要があるうえに、市場参入時期が早すぎると失敗する。後発企業は先発者が試行錯誤した結果を学べるし、タイミングも見計らえる。顧客が求めるタイミングでほかよりもすぐれていればいいのだ。

② アイデアの不安に向き合え。リスクは徹底的に下げろ

「自信満々なのが起業家だ。彼らはどうも自信がなさそうだ。これはダメだ」

グラントがワービーパーカーに出資しなかった理由のひとつがこれだ。

起業家は自信満々に見えるが、実は多くの場合そう見えるだけだ。内心は不安と疑問でビビりまくっている。ワービーパーカーの4人は、単に正直だったのである。

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