大谷翔平の二刀流を支えたマドン監督の凄い会話 「彼がやっていることを、私はやったことがない」

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「重要なことは、自分のキャリアは自分で責任をもつということ。何をすべきか、彼はわれわれよりもわかっている。昨年、彼の表情にあったストレスは見られない。ショウヘイは日々自分のやることに責任をもつという点で、その自由をとても楽しんでいる。そして彼はすでに何度も、それができることをわれわれに証明してくれた。それがまさに、私が求めていたことだった」

知将と二刀流の調和

シーズン162試合のうち、158試合に出場し、投打でほぼフル稼働。前半戦終了直後にはホームランダービー、オールスター戦にも出場した。蓄積する疲労を考慮すれば、球団から制限をかけられてもおかしくない状況だった。だが、マドン監督は積極的に投打での出場を薦めた。そして、MLB史上初の二刀流でオールスター戦出場が実現した。

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初ものが続いた今季、開幕から同監督は〝予言〞していた。投打で同時出場する〝リアル二刀流〞で起用した4月4日のホワイトソックス戦後、満足そうに気持ちを明かした。

「非常に影響力があることだし、今年はすごく面白くなるよ。彼のやることは、子どもたちも同じことをやってみたいと思うような、そういうきっかけにもなるだろう。素晴らしいことだよ。それがアメリカであろうとどこの国であろうと関係ない。ただただ、野球ファンでいて、ショウヘイ・オオタニが同じ試合に投げて打つところを見てほしい」

マドン監督は、チーム成績だけでなく、ファンの期待に応え、野球の未来も見据えている。黒縁メガネやサングラスをかけ、白ひげをはやしたダンディーな67歳。オフは夫人とキャンピングカーで過ごし、ワインをたしなむ。人心掌握にたけた知将は、野球の試合となれば勝負師に豹変する。監督としてそれぞれの選手にかける情熱。開幕を迎える前の大谷にも、期する思いがあった。

「つねに気遣ってもらっているのはすごくありがたいなと感じていたんですけど、なかなか結果が出てこなかった。そこ(期待)に応えられないというか、申しわけないなという気持ちもあった。今年はその分も返せるように頑張りたい」

固定観念を捨て、投打のフル出場で起用を続けてきたマドン監督と、驚異的なパフォーマンスで結果を残した大谷。知将と二刀流の調和が、歴史的な1年を生んだ。

斎藤 庸裕 スポーツライター

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さいとう のぶひろ / Nobuhiro Saito

米ロサンゼルス在住のスポーツライター。慶應義塾大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。編集局整理部を経て、日本のプロ野球担当記者としてロッテ、巨人、楽天の3球団を取材。ロッテでは下克上日本一、楽天では球団初の日本一を経験した。退社後、単身で渡米。17年にサンディエゴ州立大学で「スポーツMBAプログラム」の修士課程を修了し、MBA取得。18年、大谷翔平のメジャー挑戦と同時に、フリーランスの記者としてMLB(米大リーグ)の取材を始める。日刊スポーツ新聞社にも記事を寄稿。コラム「ノブ斎藤のfrom U.S.A」を配信している。

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