運賃値上げに渋谷再開発、東急社長が語る将来像 鉄道利用者減少だが「沿線の住宅需要は旺盛」

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――2021年夏に発表した渋谷の新たなまちづくり戦略(グレーター渋谷2.0)では「暮らす」という要素を強調していますが、これはコロナ後を見据えて職住近接を進めていくという狙いですか。

これまでの開発で商業施設やオフィスについては充実してきた。今後の「2.0」の開発は2020年から2030年ごろまでの10年くらいをイメージしている。コロナ禍の影響というよりも、渋谷は「自律分散型都市」の象徴的なところとしても「暮らす」という要素を加えることが重要になると考えている。渋谷に事業所を構えるIT企業などは職住近接の要望がかなり強い。東急不動産とも戦略を共有しながら、駅の近くでもレジデンス機能を充実させていきたい。

――新宿でも再開発ビル「東急歌舞伎町タワー」が2023年春に開業予定です。渋谷に次いで新宿にも進出というイメージでしょうか。

もともとあの場所は「新宿TOKYU MILANO」があったので、われわれは落下傘で進出したわけではない。ただ、新宿と渋谷は近い位置にあるので、例えば渋谷のホテルに泊まった人が夜に歌舞伎町タワーなど新宿のエンターテインメント施設に行って戻ってくるといったことも考えられる。そういった面で、両方の街を切り離して考える必要はないと思っている。

東急新横浜線開業で何が変わる?

――2022年度下期には東急新横浜線が開業し、相鉄線との直通運転が始まる予定です。

新横浜線・新綱島駅直結のマンション販売は非常に好調だ。新線の開業は新たなチャンスとなるし、東急線はこれまでも各社と相互乗り入れを行うことでよい結果を生んでいるので、相鉄線との相互直通も効果を生むと確信している。新横浜も新幹線との結節点であり、横浜エリアの重要拠点と捉えている。

――同線のほかに、今後開発に注力していきたいエリアはどこですか。

渋谷の開発は少なくともあと10年程度は続くので、当然ながらしっかりやっていきたい。一方で60年以上が経った多摩田園都市の維持活性化も大事だ。高齢化が進み、外に出て活動したいが車には乗れない、といった方々も増える。そういった移動需要をどうサポートしていくか。沿線を深耕していくことが重要だ。鉄道を中心とした事業はまだまだ通用すると思っている。

――今年、2022年は創業100周年に当たります。今後の展開をどのように考えていますか。

コロナでダメージを受けたのは事実だが、2019年に発表した長期経営構想で掲げた基本的な考え方は変わっていない。ただ、100周年の手前くらいでさらに磨き直したものをもう1度公表したいと考えている。持続可能な事業体ということをよりわかりやすく説明できるようなものにしていきたい。

本記事は週刊東洋経済12月25日号に掲載した記事「鉄道事業はまだまだ通用、渋谷開発も注力」を加筆・再構成して掲載しています。
小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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