「26歳のときに10歳年上の男性と付き合ったんです。独身みたいなことを言っていたのにふたを開けたら既婚者。奥さんにバレて嫌がらせを受けて、ストレスで10キロもやせました……。結局、私が慰謝料として100万円ほど支払った記憶があります」
美人局の逆バージョンのような話である。もうだまされたくない。桃子さんは男性を警戒するようになった。
それでも寂しさがあったのだろう。30代半ばからマルチーズばかり4匹も飼い始めた。そして、2011年の東日本大震災に遭う。
「本当に怖くて心細い思いをしました。自宅に帰っても犬しかいないし、その犬たちもいつかはいなくなります。寂しいなーと思いました」
旅行好きの桃子さんは九州にペット連れで泊まれる宿を見つける。今、桃子さんと夫の真司さん(仮名、41歳)が住んでいる町だ。オーナー夫婦と仲良くなり、通い始めるにつれて、桃子さんの気持ちに変化が生じた。
「今まで都会で仕事ばっかりしていました。でも、何もないど田舎で好きな人と生活を共有して過ごすのもいいかも、と思い始めたんです」
過疎化が進む田園地帯に移住する
貯金で暮らしながら、単身で移住を決めたのが3年前。桃子さんは婚活も並行して進めており、農家の息子に狙いを定めていた。
「嫁不足だから大切にしてくれるだろう、という打算がありました。年齢的に子どもを産むのは難しいのが問題ですけど」
会社でも水商売でも接客の仕事をしてきた桃子さんはすぐに結果を出す。同い年の農家の男性から交際を申し込まれたのだ。しかし、その直後に桃子さんは乳がんを患ってしまう。
「抗がん剤治療が卵巣を痛めることがあるので、子どもを産める可能性はますます減ってしまいます。彼は最初『オレが支えるから』と言ってくれたのですが、結局は去られてしまいました」
まさに泣きっ面に蜂、である。そんなときに桃子さんを支えてくれたのは「近所の世話焼きおばちゃん」だった。
桃子さんが移住したのは過疎化が進む田園地帯。女性1人で移住してきた当初は「変わっている人がいる」と遠巻きにされていたが、地域行事などに積極的に参加していたらかわいがってもらえるようになったのだ。
「毎週のよう食べ物を持って来てくれるおばちゃんが独身男性を3人も紹介してくれました。その1人が夫です」
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