シンガポールから規制大国日本への挑戦状《新しい経営の形》
法の抜け穴を突く奇案 シンガポールに陣営築く
ケンコーコムのホームページ。トップ画面を下に下にスクロールしていくと、左端に「医薬品関連商品のショッピングなら」というバナーが現れる。クリックすると、「ケンコーコムSG」(以下、SG)というサイトに飛ぶ仕組みになっている。
SGはケンコーコムがシンガポールに設立した海外子会社だ。サイトに並ぶのは、昨年通販で禁止された医薬品の数々。海外企業からの個人輸入という形を取ることで、日本の法規制の対象から逃れ、医薬品のネット通販を可能にしたのだ。
同社設立時に代理人を務めた港国際法律事務所の玄君先(ゲンクンセン)弁護士は、「法的にはかなりクリーン」と強調する。国内で承認された医薬品であるうえに、海外を本拠地とする企業を規制する法律は日本にはない。
厚労省も合法と認めている。
しかし、日本国内に向けて通販をする以上、法の抜け穴を突く手法という見方があるのは事実。「医薬品は通常の商品とは違う。企業としての自覚が足りない」と不快感を示す通販業界関係者もいる。玄弁護士は「親会社が日本の会社である以上、厚労省から口出しされるリスクがまったくないとは言えない。弁護士の立場としては反対した」。それでも、後藤社長の決心は揺らがなかった。
配送料は国内が490円なのに対し、SG経由だと650円(6000円以上購入で無料)。シンガポールは国家の戦略で、物流コストを抑えており、日本国内とシンガポール−日本間の運送代に大差はない。ただ、配送に時間がかかるうえ、副作用被害の救済措置の対象から外れる。その影響もあり、規制前の医薬品売上高は依然カバーできていない。それでも、購入者数は右肩上がりで伸び続けている。
太く長く成長するために規制解除まで戦う姿勢
後藤社長は以前から、将来的に海外で日本の医薬品を販売したい、と考えてきた。規制によって予定は前倒しになり、拠点は海外となった。しかし、単に規制の逃げ道としてでなく、新たなビジネスの可能性をSGに見いだしている。