日本経済を殲滅(せんめつ)せよ エドワード・ミラー著/金子宣子訳 ~真珠湾前に金融パワーで対日戦に勝利した米国

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 日本に対する経済封鎖が成功した決定的要因は、「対敵通商法」第5項(b)、すなわち日本に対して米国の許可を得ない為替取引、金・銀、通貨、有価証券、輸出書類などの米国外への持出の禁止によって米国内の日本の資産を凍結したことと断定しているのが本書の骨子である。それは、当時の政府高官の「米国は国際政治経済という闘争の場で、現在、自らの金融パワーを行使している。国際競争という戦闘の中で、金融兵器の使用を宣言するか否かを問わず、この兵器は極めて強力である」の発言にも表れている。この金融パワーは戦後65年を経た現在においてなお有効だ。

本書に掲載されている統計資料(たとえば、表1の「日本の石油供給と需要、1936−1940年」)を見るだけで、日本の弱点を開戦前から見抜かれていたことが明らかだ。それでも戦争することを決断した当時の日本政府・軍の「非」孫子的兵法が逆に浮き彫りになる。経済封鎖で成功したかのように見える米国の側にも失点は多かったと著者は言う。国務省と財務省、軍と政府との対立などが対日制裁の非効率を生んだというのだ。

本書の読み方の一つは、エピローグ、訳者あとがきから読み始めることだ。これでもかとばかり盛り込まれている、各種分析を整理した形で読み進めることが可能になる。

Edward S.Miller
歴史家。米国ワシントンDC在住。米シラキューズ大学卒。米ハーバード・ビジネススクール高等経営コース修了。米国大手鉱業・エネルギー企業の最高財務責任者などを歴任。著書に、対日軍事戦略を描いた『オレンジ計画』などがある。

新潮社 2310円 383ページ

  

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