10年後に生き残る、「理系+文系発想」 65%の小学生が「今はない仕事」に就く時代に
これらの分野に直結する学部は、ロボット工学や人間工学、情報通信、遺伝子工学やバイオサイエンスなどだ。それらの専門性のニーズは今後さらに高まるだろうが、必要なのは専門知識だけではない。
3Dプリンティング事業を行うJMCは、社長が文系出身で、社員の半分も文系出身者。だれもこの技術に注目していなかった15年前から、事業を始めた。
取材に訪れた日も、人間科学部、法学部、音大出身など、「文系脳」の社員たちが活躍していた。相手にするのは医療機関。JMCには、毎月20~25件ほど「頭蓋骨」の注文が入る。
ニーズを聞き出す力
日本には、脳挫傷や脳梗塞などで、頭部に穴を開ける手術が年間1万症例ある。手術後に穴を埋める時に、患者が違和感を覚えないよう、まず穴が開いた状態の頭蓋骨の模型をつくって、テストをする。
医療機関は手術室で患者の頭を開き、CTを撮影する。CTデータを受け取ったJMCは、それを3Dデータに置き換え、3Dプリンターに。焼き加工も含め、模型完成まで10時間もかからない。
一刻を争う医療の現場をサポートするため、どんな案件も36時間以内の完成を約束する体制をつくった。高度な技術以上に、取引先のニーズを聞き出し、それに合わせたスピーディーな生産体制をつくったことが信頼につながっているという。渡邊大知社長は言う。
「3Dプリンターを使った事業は、まだ新しく正解がない。モノづくりの知識が豊富な人より、プラモデル好きの方が活躍できるかも、というくらいです」
デジタル技術を教えるデジタルハリウッド大学の杉山知之学長は、10年後に必要なスキルについてこう断言する。
「英語とITは、特殊な専門スキルではなく、できて当然の基礎スキルになるでしょうね」