民主党でも失敗した脱「対米依存」の試み、日本の民主化努力をオバマ政権は邪魔するな--イアン・ブルマ 米バード大学教授/ジャーナリスト
日本の対米依存はイタリアなどのヨーロッパ諸国よりも大きかった。西欧の軍隊は、軍事同盟のNATO(北大西洋条約機構)に組み込まれた。これに対し旧帝国軍は、日本を壊滅的な太平洋戦争に追いやった責任を問われたこともあり、戦後、日本が軍隊を保有することは想定されていなかった。占領中にアメリカは平和憲法を制定し、軍隊の海外派遣を憲法違反とした。戦争と平和という安全保障問題に関して、日本は主権を放棄してしまったのだ。
日本人は平和主義者であることに満足していた。政府は産業基盤の整備にエネルギーを集中することができた。その一方でアメリカが日本の安全保障を引き受け、日本の外交のかなりの部分を担った。これは互いにとって好都合だった。日本は経済的に豊かになり、アメリカは従順で反共的な従属国を手に入れた。アジアでは共産主義の中国でさえ、日本の軍事力の復興よりもアメリカ主導の平和を歓迎したのである。
しかし、そのために日本は大きな政治的犠牲を払わなければならなかった。外国の軍事力に過剰に依存し、大企業と官僚の仲介を主な役割とする政党に政権を独占されたことで、民主主義の発展は阻害され、腐敗を招いた。
キリスト教民主党の支配下にあったイタリアも同じ問題を抱えていた。だが、冷戦の終結で政治的状況が変わり、旧来の政党は権力を失った。それ自体はよいことだった。ただし、政治的真空が右派政党フォルツア・イタリアの指導者、シルビオ・ベルルスコーニの台頭で埋められたことは、あまりよいことではなかったかもしれない。対照的に、東アジアでは冷戦はまだ完全には終わっていない。北朝鮮は依然として問題を引き起こしているし、中国も名目的には共産主義国家である。
しかし、現在の東アジアは戦後の荒廃の中にあった世界とは違う。中国は大国になり、他のアジア諸国と同様に、日本は東アジアの新しい状況を受け入れなければならなくなっている。日本は中国と力の均衡を図ることができる、唯一のアジアの民主国家である。だが、戦後に確立した日本のシステムは、この役割を果たすのに適しているとはいえない。