スコットランド住民投票が投げかけた波紋 英国の分裂回避だが、EUの危機を醸成
税・予算・社会保障分野でのスコットランド議会へのさらなる権限移譲について、主要3政党は具体案をまとめ、11月末までにスコットランド側と合意し、来年1月までに法案を準備、来年5月の総選挙後の立法化を目指している。だが、権限移譲の提案は世論調査での予期せぬ独立派の追い上げに、危機感を覚えた与野党の党首が慌てて表明したもの。与野党間の調整や党内の根回しもこれからで、具体策の協議は難航が予想される。
与野党議員の間からはスコットランドへの一方的な権限移譲に反発の声も聞かれる。現在の地方交付税の配分方式では、スコットランドは、イングランド、ウェールズ、北アイルランドと比べ、手厚い財政移転を受けている。権限移譲と引き換えに、こうした傾斜配分の見直しを求める声も上がっている。
また、ブレア政権(労働党)時代にスコットランド、ウェールズ、北アイルランド議会が復活し、行政府運営にかかわる一定の立法権限が移譲された一方で、イングランド議会は今も存在せず、英国議会が立法権限を保持している。
そのため、英国議会でイングランドに関連する法案を審議する際には、スコットランド選出議員の投票権を制限すべきとの声が保守党議員の間で高まっている。
労働党は世論調査で保守党をリードしており、来年5月の総選挙で政権を奪還する可能性がある(右図)。
だが、スコットランド選出議員の投票が制限された場合、イングランド選出議員の多い保守党の協力なしにはイングランド関連の法案成立が難しくなる。キャメロン首相はスコットランドへの権限移譲と投票権の制限を同時並行で議論することを求めている。
これが労働党にとって逆風となり、総選挙で保守党が地滑り的に勝利することや、政権交代しても労働党の議会運営が行き詰まるおそれがある。
英国EU離脱のリスクと独立気運の高まり
キャメロン首相は次の総選挙で保守党が勝利した場合、2017年に英国のEU離脱の是非を問う、国民投票の実施を約束している。また、労働党の有力支持基盤である労働組合の幹部は、スコットランドの住民投票の結果を受け、EU離脱の是非を問う国民投票の実施をミリバンド党首に促した。独立回避で英国のEU離脱リスクが遠のいたと考えるのは早計だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら