日本企業の人事部は経営に貢献できない 書評:『合理的人事マネジメント』を読む
日本企業の教育制度は硬直的
社内向けの経営理念だけでなく、新卒の採用広報でも「求める人材像」はたいてい“自律型人材”をうたっている。陳腐だし、そもそも学生に対し“自律型人材”を訴求すること自体に合理性があるのか、極めて疑問である。
著者はこの概念(自律型人材)が当たり前としたうえで、その当たり前すぎる概念を持ち出す理由がわからないと書いている。もし企業自体が自律的でなくなっているのなら、経営者が率先して実行すべき課題であり、憲章などのお題目に書いても効果がないからだ。
しかし、多くの企業でこんな観念的な概念のために抽象的な議論がなされているわけだ。不毛だ。もっと議論し、策定し、実行しなければならない人事課題があるはずだ。
第5章「合理的な人事制度の重要論点」は、人事制度が向かうべき方位を明確に示していると思う。特に重要な指摘は教育制度に関するものだ。著者は「人事の諸制度の中でも最も発展と理論的な進化が遅れているのは教育制度」と指摘するが、たぶんそのとおりなのだろう。
多くの企業で教育制度は硬直的だ。従来から実施されてきた研修がパターン化されていることが多く、どのようなスキルを持つ人材をどのように(期間や人員規模、レベル)育てるのかという視点が欠けている。
本書を読むと、日本企業に山積している人事課題が俯瞰できる。人事はこの課題に立ち向かうやりがいのある部署とも言える。本書は人事課題を解決するための指南書として優れていると思う。人事だけでなくマネジメント層、経営者層にとっても有益だろう。
(撮影:尾形文繁)
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