染料の価格高騰に潜む"あの国"の政策転換 染工場からは悲痛な叫びが上がる

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特に値上がりの顕著なのが、ポリエステルの染色に用いられる「分散染料」だ。自動車シートに使われる代表的な青色染料原末の価格は、昨年3月に1キログラム当たり825~1050円だったが、今年8月には2170~3090円程度まで上昇。黒色を出すのにも使われるので、ほかの色より需要が大きいためだ。

程度の違いはあるが、ナイロンや羊毛に使われる「酸性染料」や、綿に使われる「反応染料」も同様の動きだ。

値上がりの要因は、中国の規制以外にもある。染料や関連する原材料が相対で取引されていて業界共通の相場がないことと、中国の染料業界で寡占化が進んでいることだ。

国内最大手の染料メーカー、日本化薬の石垣克己・色材事業部長は「適正な価格がどうしても形成されにくい。ほかの国でも造っていれば、こんなことにならなかった」と漏らす。同社が購入する原料のほとんどは中国製だ。

価格転嫁は厳しい

染色加工業者にとって、収益源の大半を染色の加工料金が占める。だが、「染料価格が上がっても、加工料金への転嫁は厳しい」(業界関係者)という声も聞かれる。

自動車用シート材の国内最大手、セーレンは自社で染色も手掛けている。「染料の高騰は、2013年度比で億円単位のコストアップ要因」(経営企画部)だという。アパレル向けに染色加工しているサカイオーベックスは、染料を含むコストアップによって2014年度は減益を見込んでいる。

ある染色加工会社の幹部は「異常な値上がりが続いており、戦々恐々としている。おまけに同業他社が価格転嫁をしていないため、我慢比べになっている」とも嘆く。

染料だけではなく、円安などに伴うエネルギーコストの上昇も痛手だ。このまま製品価格に転嫁する動きが広がらなければ、経営体力に劣る染色加工業者が淘汰される動きも出てきそうだ。

「週刊東洋経済」2014年9月27日号<9月22日発売>掲載の「価格を読む」を転載)

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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