「ヒグマ駆除で銃の使用禁止」にハンター怒りの声 裁判中に被害が相次ぎ、死者は10人を超える

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だが、警察は現場周辺を真上から俯瞰した平面図を根拠に「銃弾の発射された先に住宅がある」と言い募り、土手の存在を伝える池上さんの言い分に耳を傾けようとしなかった。

池上さんらの声に応え裁判所が異例の調査

行政訴訟の審理にあたった札幌地方裁判所の廣瀬孝裁判長は、池上さんらの「現場を見てほしい」という声に応えて異例の現地調査に踏み切り、昨年10月に駆除現場を訪ねて自ら現地の高低差などを確認している。

異例の現地調査に踏み切った札幌地裁の廣瀬孝裁判長=昨年10月7日午後、砂川市宮城の沢

さらに今年10月に同地裁で設けられた証人尋問では、駆除に立ち会った警察官が、はからずも池上さんの発砲の安全性を請け合う証言を残すことになった。

原告代理人・中村憲昭弁護士(札幌弁護士会)による反対尋問の一部を、下に引いておく。言わずもがなの念を押しておくが、問いに答える警察官は“被告側の証人”だ。

――周りの家に弾丸が当たることがありえると思いましたか。
「いえ、ないと」
――判断に迷うときは署に連絡しますよね。
「はい」
――今回、連絡しなかったのは、判断に迷わなかったから。
「具体的な危険はないと」
――駆除が終了して、あなたは。
「……適切に終了したと思いました」

同じ日の法廷では、砂川署による不適切な取り調べがあった疑いさえ指摘されている。中村弁護士と原告・池上さん自身のやりとりを以下に記す。

――調書では「弾丸が100%の確率でバックストップに刺さるとは断定できない」と。そう説明した記憶はありますか。
「ないですね。捜査員が外に出てって書いてきたやつに『サインしろ』と言われたので。とにかく長時間の取り調べで、しょっちゅう文章を書き直しては戻ってくるんですよ。私が言った趣旨とは違う」
――これ「供述録取書」といって、池上さんが言ったことを警察官が書いている。今の話だと、捜査官はその場で調書にしたわけじゃなく、誰かに相談してたんですか。
「外で課長と話してたようで『とにかくこうやって書いたほうがいいから』なんて、何回も行ったり来たりしてました」

裁判が続いた1年半の間に北海道ではヒグマの被害が相次ぎ、今年に入ってからの死傷者は10人を超えている。6月には札幌市の住宅街で男女4人が重軽傷を負う被害に遭い、11月には夕張市の山林でクマに襲われたとみられる男性の遺体が見つかった。

自信も狩猟免許を持つ中村憲昭弁護士は、当初から「警察の異常な処罰感情」を指摘していた
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