コロナ禍で「国内外の格差」が増幅した根本理由 「人材投資」の充実こそが格差是正のカギ!
『経済がわかる論点50 2022』の執筆者の1人でみずほリサーチ&テクノロジーズの主席エコノミストの山本康雄氏が、コロナ禍で増幅する格差問題の現状と解消への取り組みを解説する。
低所得国でコロナ禍からの回復が遅れる理由
国家間の経済格差については、概して低所得国(1人当たりGNI(国民総所得)が1,045ドル以下の国、約30カ国)の出生率が先進国に比べて高いことから、低所得国に暮らす人々の割合が継続的に上昇していくことが見込まれていた。
今回のコロナショックでは、当初は先進国で厳しいロックダウン(都市閉鎖)が行われたことから、国家間の格差は2020年に一時的に縮小する形になった。しかしながら、ウイルスへの対処能力の面で先進国と新興国、特に低所得国との間には差があり、コロナ禍からの回復局面で再び国家間の格差が拡大する懸念が強まっている。
回復局面で格差が広がった第1の要因は、財政出動の規模である。一般に先進国では財政に余力があったり、国債発行で賄ったりすることで、コロナ禍で打撃を受けた家計や企業への給付金や融資・保証、税の減免といった経済対策を大規模に講じることができた。一方、多くの低所得国は財政出動の余力が乏しく、経済対策の規模は先進国に比べて小さかった。
第2の要因は、ワクチン確保・普及のスピードである。ワクチン普及は当初イスラエル、英国、アメリカなどが先行した。その後、多くの先進国に広まったが、新興国への普及はやや遅れた。2021年の夏には、ワクチン普及が遅れていた東南アジア諸国でデルタ株が広がった結果、多くの現地工場が操業停止に追い込まれ、世界的な自動車や電化製品の減産につながった。
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