コロナ禍で「国内外の格差」が増幅した根本理由 「人材投資」の充実こそが格差是正のカギ!

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縮小

現在、新興国にもワクチンが普及しつつあるものの、低所得国を中心にワクチン確保がままならない状態になっている国は多い。足元でさらに感染力の強い変異ウイルスとして注目されているオミクロン株が最初に見つかった南アフリカのワクチン普及率は、まだ20%台に過ぎない(南アフリカ自体は低所得国ではないが、周辺アフリカ諸国には低所得国が多く、ワクチン普及率は総じて低い)。

結果として、コロナ禍からの景気回復は、概ね先進国が先導する形になった。低所得国の一部は財政悪化の影響で国債の格付けが引き下げられ、債務不履行(デフォルト)に陥る事例もあるなど、コロナ禍は国家間の格差拡大に拍車をかけるファクターとなっている。

日本でも低所得者を直撃

国内の所得・資産格差も、コロナ禍を受けて拡大した。もともと一部の富裕層が多くの資産を保有する「富の集中」が懸念されていたが、富裕層の資産はコロナ禍を受けてむしろ膨張した。アメリカ・欧州・日本などの中央銀行が金融緩和を強化したこともあって、コロナショック直後の株価下落は一時的なものにとどまり、その後の株価は世界的に高騰した。それによって、金融資産を多く保有する富裕層が恩恵を受けることになった。

今回に限らず、景気悪化時は低所得者の方が悪影響を被りやすい傾向にある。例えば、2008年9月のリーマンショック後の日本では、いわゆる「派遣切り」が社会問題になった。しかし、コロナショックはその性格上、通常の景気後退よりも低所得者への悪影響が大きくなっている。外食・旅行・エンターテイメントなど、長距離の移動や対人接触を伴う行動が制限された結果、飲食店・宿泊業・娯楽業などが甚大な打撃を受けた。こうした業種はパートタイム労働者や派遣労働者など非正規雇用の比率が高く、もともと他業種に比べて賃金水準が低い。これらの業種は一般的にテレワークになじまないこともあり、休業や営業時間の制限が収入の喪失・減少に直結しやすい面もある。

一方で、製造業はコロナショック直後こそ落ち込んだものの、世界的な財需要の持ち直しを受けて、2021年にかけて急回復した。情報通信業や宅配業などのようにコロナ禍でむしろ特需が生じている業種もある一方、飲食・宿泊・娯楽など対人接触型サービス業に従事する人々の所得悪化が際立っている。

さらに、感染防止のために学校や幼児教育施設、介護施設等が閉鎖されると、保護者や介護者が家にいなければならなくなる。特に働き手が1人しかいない世帯にとっては収入を得る道が閉ざされ、死活問題となってしまう。日本ではひとり親世帯、なかでもシングルマザー世帯の苦境が報じられることも多かった。

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