「住宅ローン控除見直し」マイホーム派への影響度 控除率が縮小されたら購入希望者はどうすべきか
住宅ローン控除見直しが検討されている背景にあるのは「逆ザヤ」と呼ばれる現象です。現状の制度では、1%を下回る金利で住宅ローンを組んだ場合、それよりも住宅ローン控除の控除率が高いため、支払い利息よりも戻ってくる税金のほうが多くなります。
例えば、4000万円の住宅ローンを金利0.5%で借りると、簡易的な計算上は4000万円×0.5%=20万円の金利支払いが発生します。一方で、住宅ローン控除による所得税の還付額は4000万円×1%=40万円です。所得税還付額40万円-住宅ローン金利支払い20万円=20万円の得となります。
この20万円が逆ザヤとなり、10年で200万円の非課税収入が発生することになります。4000万円の住宅ローンに対して200万円の収入ですから、固定資産税などの税金を無視すると、借り入れ価格の5%相当を得ることができます。
逆ザヤを利用するには、より低い金利で住宅ローンを借りればいいので、例えばネット銀行の金利0.3%であれば、金利の差である利ざやが0.7%となり、1年で28万円、10年で280万円の逆ザヤ収入を得ることができます。
上述の内容に対して、税制本来の「公平性」「中立性」から逸脱していると感じた人もいるでしょう。まさにそのとおりで、一部の人だけ得する制度であってはならないことから、今回の税制見直しの検討につながります。
そもそも、働いて一定の所得税・住民税を支払っている人でなければメリットがないことも、税制の歪みと言えそうです。
住宅ローン控除が変わるとどれだけ影響がある?
本稿執筆時点(2021年11月27日)では、住宅ローン控除は「1%」から「0.7%」に減少する案が出されています。
既述の借入金4000万円と仮定すると、1年で28万円の所得税還付となります。あるメガバンクの金利幅は変動金利で0.475~0.725%となっています(※金利に幅があるのは、働き方や借りる人の信用度合いによって金利が異なるためです。公務員や上場企業勤務、弁護士など収入が安定していると見なされる職種の場合は、最優遇金利が提示されます。収入の見通しが前述の職業よりも安定していないと判断されると、金利が上昇します。なお、「フラット35」に代表される国の住宅ローンは、全期間固定金利しか選択できませんが、働き方による金利差はありません)。
つまり、住宅ローン控除の借入金額4000万円の場合、現行の住宅ローン控除では40万円の還付がありますが、控除率が0.7%に縮小された場合は28万円の還付となります。単純な計算で1年で12万円、10年で120万円の差がつくわけです。
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