ギリシャの財政危機はEU破綻の序曲なのか--ジョセフ・S・ナイ ハーバード大学教授

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 欧州外交評議会のマーク・レナード専務理事は「欧州の時代は終わったというのが世間一般の見解だ。ビジョンの欠如、分裂、法的な枠組みへの固執、軍事力強化への消極性、硬直的経済は米国とは対照的である。しかしながら、問題は欧州にあるのではない。私たちのパワーに対する理解が時代遅れであることが問題なのだ」と語っている。

米国の政治学者アンドリュー・モラフチークは、米国を除くと、欧州諸国はハードパワーからソフトパワーに至る全範囲で国際的な影響力を行使できる唯一の存在であるという。さらに、世界は“二極化”しており、今後もそうした状況が続くと予測する。モラフチークは、欧州に対する悲観的な予測は「パワーは世界の総資源に占める相対的なシェアと関連しており、各国はつねにゼロサムの競争を展開している」という、19世紀の現実主義者の見方に依拠したものであると主張している。

モラフチークによると、欧州は現在でも、世界第2の軍事大国であり、世界の軍事予算に占める比率は21%に達する(中国5%、ロシア3%、インド2%)。経済力に関して言えば、欧州は世界最大の市場であり、世界貿易に占める比率は米国の12%を上回る17%である。また世界の対外援助に占める比率は、米国の20%に対し50%に上る。

ただし、資本市場のユーロに対する疑念を払拭しないかぎり、欧州の潜在力を十分に発揮することはできないだろう。欧州の壮大な実験を称賛している人々は、その成功を願っているに違いない。=敬称略=

Joseph S. Nye, Jr.
1937年生まれ。64年、ハーバード大学大学院博士課程修了。政治学博士。カーター政権国務次官代理、クリントン政権国防次官補を歴任。ハーバード大学ケネディ行政大学院学長などを経て、現在同大学特別功労教授。『ソフト・パワー』など著書多数。

photo:Euseson Creative Commons BY-SA

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