夢に挑む東大生「人類は、火星に移住できるか?」 「二酸化炭素が地球を救う」化学者が語る野望

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脱炭素によって地球温暖化を食い止めようとする動きが今、世界中で広がっている。その動きには政府や自治体、企業に関係する大人たちだけが関わっているわけではない。問題意識を持った若者たちもそれぞれのやり方で独自の取り組みを進めている。スウェーデンの環境活動家で18歳のグレタ・トゥンベリさんもその1人だが、グレタさんとは異なるアプローチで独自の活動をしている若者が、ここ日本にもいる。それが東大工学部3年生の村木風海(かずみ)さんだ。現在21歳。村木さんはどんな人で、何がきっかけで、どのような活動をしているのか。村木さんの来歴を知ることで新たな教育のヒントが見えてきた。

「火星移住」を目指し、高2で独立系研究機関を立ち上げた

『火星に住むつもりです~二酸化炭素が地球を救う~』(光文社)

村木風海さんは現在21歳、東京大学工学部化学生命工学科の3年生である。だが、彼は単なる東大生ではない。一般社団法人炭素回収技術研究機構(CRRA:シーラ)を設立し、代表理事・機構長として地球温暖化を止めるための研究を行っている研究者でもある。サイトを見ると、化学者だけでなく、発明家、冒険家、社会起業家などの肩書も並ぶが、さらに面白いのは人類の火星移住を実現させる研究も同時に行っていることだ。それも相当本気で、である。今年9月には著書『火星に住むつもりです~二酸化炭素が地球を救う~』を刊行。タイトルもぶっ飛んでいるが、私たちの小さな価値観がひっくり返るような、誰もが元気になる内容で多くの読者を獲得している。

火星移住を標榜した有名人といえば、自動車メーカーのテスラや宇宙企業スペースXの創業者で、トリックスターのように振る舞うイーロン・マスク氏が想起される。村木さんも、さぞやエッジの効いた若者だと想像したのだが、実際にはまじめで素直、ちゃめっ気のある、チャーミングな男性だったのでびっくりである。

そんな村木さんが創設したCRRAのミッションは「地球を守り、火星を拓く。」というもの。地球温暖化を止めて人類全員を救う研究から、その技術を使って人類の火星移住を実現する研究を続けている。CRRAをつくったのは2017年、驚くことに村木さんが高校2年生のときだ。そこから1人で研究を続け、法人化したのがコロナ禍にあった2020年だった。

「これまでも国の研究機関や大学で研究活動を行ったことがありますが、時代の流れに左右されず、100年一貫して温暖化を止めていける方法を確立するために独立の道を探りました。しかし、NPOでは収益化はかなわず、株式会社では株主に気を使わなければならない。そこで株主がおらず、営利事業が可能な一般社団法人を選んだのです。将来はCRRAをNASAやJAXAを超えるような世界最高峰の独立系研究機関にしたいと思っています」

米航空宇宙局(NASA)の火星無人探査機「キュリオシティー(Curiosity)」が初めてカラーで捉えた火星の夕日の画像。キュリオシティーのTwitterでも公開されている。火星から見た夕日は、青みがかっていたようだ(写真:Curiosity RoverのTwitterより)

そもそも村木さんが研究の道に入ったのは小学4年生の頃。祖父からプレゼントされた1冊の本がきっかけだった。

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