夢に挑む東大生「人類は、火星に移住できるか?」 「二酸化炭素が地球を救う」化学者が語る野望

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ここまで読んで村木さんのような人物は例外だと思う人も少なくないかもしれない。だが、実は村木さんはもともと「ド文系」。得意科目は国語・社会・英語で、理科は普通、数学は苦手科目だった。それでも根っからの化学好きで、とくに理科の実験は好きだった。

「だから、化学者に憧れました。ただ、得意というより好きだったからこそ、“化学界の池上彰さん”のように絶対に専門用語を使わないスタイルで、正しく楽しくわかりやすく化学のことを伝えられる人になりたいと思ったのです」

そこから独自に自分の信じる道を歩んできた村木さん。今、教育界では自分で課題を解決していくためにSTEAM教育の必要性が叫ばれているが、そのことをどう見ているのだろうか。

「もちろん、すばらしいことだと思いますが、じゃあ、これから理系の勉強をしなさい、と子どもに押し付けるものであってはならないと感じています。そもそも僕は人類全員が好きなことを好きなだけやればいいと考えています。世の中の人の興味はいい感じで分散していて、それぞれが徹底的に好きなことを世界一だと自負できるくらいやりこむことができれば、絶対に人類は幸せになれると思っています。誰かが嫌いなことでも、誰かにとっては好きなことだったりする。だから、理系はよくて、文系はダメだということはまったくない。むしろ、どうやって人に伝えるとか、どう人の意識を変えていくかといったことは文系の人にしかできない仕事です。それがなければ、科学も回らなくなってしまう。僕は、基本的に科学に興味を持った子が好きなことを好きなだけやれる環境を整えることが大事で、全員に理系を押し付けることは違うと思っています」

勉強しなさいと、一度も言われたことがない

では、これから子どもたちが主体的に学べるように促していくために、親はどんなことをすべきなのだろうか。

「すべきことというよりは、逆にするべきでないことを考えればいいと思っています。うちはサラリーマン家庭で、中高も公立でした。塾は通ったことがないし、英才教育を受けたこともありません。ただ、僕が両親にとても感謝しているのは、勉強しろ、と一度も言われたことがないことです。もちろん親として言いたいことはあったと思いますが、あえて言わなかった。高校も大学も行きたくなければ行かなくていい。もし皆が行くからという理由で行くのなら、絶対行くなと言われました。テストも点数で怒られたことはありません。いかに努力したか、いかにやれることをすべてやったかが大事で、そこを怠っていれば怒られますが、やることをすべてやって、その結果なら仕方ない。プロセスが大事で結果はついてくるものであることをよく親は話していました」

ちなみに両親は化学に詳しい研究者だったわけではない。基本は自分の人生だからという理由で、村木さんが好きなことをできる環境を与えてくれた。だから、ネットで独学しながら研究に没頭できたし、そんな自分を応援してくれたことがうれしかったという。

「今は大学に行かなくても、ネットで最新の情報を入手して独学できる時代です。そもそも僕の研究分野は新しく、参考文献も少なく、あっても海外のものばかり。ですから、ネットで調べて課題を解決していったのです。一方で、小説などもたくさん読みましたね。読みながら世界を想像したのです。そのおかげで結果的に想像力が豊かになってしまったことは研究者として今役立っています。僕は基本的に実現したい未来から考えて、そこから逆算して今やるべきことを割り出していく方法をとっています。現在からの積み上げではない。まず未来を想像するからこそ、研究者としてぶっ飛んだ発想ができるのです」

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