ベラルーシから欧州へ「移民殺到」人道的な大問題

英国はロシアとの偶発的な戦争リスクに言及

ジャーナリストは、もともとベラルーシのルカシェンコ大統領は野党勢力の弾圧や独裁的な統治で批判されている人物。この問題を深刻に捉えたEUがベラルーシへの批判を強めたことを受けてルカシェンコ大統領は、「われわれはこれまで、麻薬や移民が(EUに流入しないように)押しとどめてきた。しかし、これからはEUが自分たちで処理することになるだろう」と言い放ったのである。

その直後から、ベラルーシの西隣に位置するリトアニアへのイラク人などの移民が数千人規模に急増。その総数は8月の初旬時点で4000人以上とされ、リトアニアはすぐに緊急事態を宣言して移民の扱いを厳格化する事態となる。

同様の事態は、ベラルーシと国境を接するラトビアやポーランドでも発生し、これらの国々が厳格な移民の流入防止対策を取り始めて今に至る。ポーランドやリトアニアの強硬な移民管理を問題視する人々がいるのも事実で、ロシアのプーチン大統領は、これが西側の主張する人道主義なのかと皮肉っている。

外国人旅行者向けに簡易手続きでビザ発給

ここで気になるのは、移民の動きである。遠く離れたイラクやシリアといった中東の移民が、どのようにベラルーシまで来ているのだろうか。

シリアやイラク、トルコの旅行会社は最近になってベラルーシツアーの広告を大々的に始めた。ベラルーシの領事組織がベラルーシのビザ発給をこれらの旅行会社に認めていると言われている。

森を抜けて不法侵入しようとした移民は、その後保護施設に収容された(James Hill/The New York Times)

そうでなくともベラルーシ外務省は簡易な手続きでのビザ発給を外国人旅行者向けに実施しており、旅行者はベラルーシ到着後に空港内で査証を受け取ることができる。移民希望者は、旅行会社からベラルーシ行きの短期間のツアーを3000ドル程度、家族であれば1~2万ドル程度で購入すると言われている。その期間にEU側に抜けるということは、もちろん織り込み済みだ。

ベラルーシは今年に入って、トルコやイラクとの航空便を大幅に増加させており、イラク便は週5便、トルコ便は週8便、その他にチャーター便までが開設されている状況である。ちょっとしたベラルーシブームなのかと思ってしまうが、実際には乗客の大半が移民なのだ。これでは国家ぐるみで移民の輸送を行っていると言われても仕方がないだろう。

旅行会社は、交通費や宿泊費の他に、1500~3000ユーロ程度の担保金を受け取る。これは、移民たちがビザの認める期間中(72時間とされる)にEUに出国できず、強制送還しなければならなくなった場合の費用の補てんのためである。これを見てもわかる通り、ベラルーシは移民の経由地とはなっているが、自分で移民を受け入れるつもりはまったくない。

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