参院選は大丈夫?衆院選「議席予測大外れ」の余波 時代遅れの調査手法の限界を露呈したメディア
振り返れば、選挙戦の最中の各主要メディアの全国情勢調査による各党獲得議席予測の段階から、その予兆はあった。
読売、日経など政権寄りとされる全国紙が系列民放とも組んでの情勢調査とその分析では「自民単独過半数は微妙」だった。その一方で政権に批判的とされる朝日、毎日両紙は「自民単独過半数確保は確実」と分析、対照が際立っていた。
とくに、朝日新聞は選挙戦が終盤を迎える10月26日の朝刊で、「自民過半数確保の勢い」との大見出しに、「立憲ほぼ横ばい」との中見出しを付けて注目された。
しかも、その際に表示した具体的議席推計では自民が「251~279」、立憲が「94~120」となっていた。朝日は今回初めて従来の電話調査(固定・携帯)に加えてインターネット調査を実施し、その有効回答から導き出した獲得議席推計を「生数字を重視して公表した」(関係者)とされる。
結果から見て、多くの情勢調査の中で、この朝日の数字だけが「予測としてはかなり正確」(選挙アナリスト)だったことになる。
もちろん、選挙戦終盤でのほかのメディアの「自民苦戦」報道での危機感が、激戦区での自民陣営の底力発揮につながったというアナウンスメント効果は否定できないが、「どこにも風が吹いていない」(同)という、ここ数回では例のない選挙戦だっただけに、調査を踏まえての議席推計の難しさを象徴しているともいえる。
選挙予測の戦国時代に突入する
今回衆院選での予測と結果の「逆転」について、選挙に関する世論調査の権威として知られる松本正生・埼玉大学名誉教授は、11月10日に日本記者クラブで行った記者会見で「今回の選挙結果が、報道機関の予測・調査方法の岐路となる」と指摘。「これからは選挙予測の戦国時代に突入する」と予言した。
松本氏の指摘は「今回のメディアの予測は、時代遅れの調査手法の限界を露呈した」との厳しい分析からとみられる。
一方、政党側もこうした分析に危機感を強めている。とくに、立憲を中心とする主要野党側からは、「メディアに頼らずに自前の調査の精度を上げなければ、同じ間違いを犯すが、対応は困難」(立憲幹部)と頭を抱える。ネット時代に即応できる調査を自前で実施するには億単位の資金が必要とされるからだ。
これに対し、自民党は「政権とメディアとの関係を密にして、新たな手法での調査の結果を入手できれば、選挙の切り札になる」(選対関係者)と手ぐすねをひく。ただ、メディア側からは「経営が苦しい中で選挙にばかりコストをかけられない」との厭戦気分もあり、来夏の参院選での獲得議席予測を抜本的に見直す声も広がっている。
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