参院選は大丈夫?衆院選「議席予測大外れ」の余波 時代遅れの調査手法の限界を露呈したメディア
10月31日に投票、即日開票された今回衆院選で、テレビ各局は開票特別番組で、従来同様に投票締め切りの午後8時と同時に、出口調査をもとにした獲得議席予測を速報、その内容は以下のとおりだった。(自民は自、公明は公、立憲民主は立、共産は共、維新は維、国民民主は国、れいわはれ、社民は社)
自212~253、公27~35、立99~141、共8~14、維34~47、国7~12、れ1~5、社0~2
自238、公31、立114、共10、維45、国12、れ2、社1
自243、公32、立113、共12、維39、国12
自239、公30、立115、共12、維40、国13、れ3、社1
自240、公30、立110、共11、維45、国13
自230、公31、立130、共14、維39、国7、れ1、社1
これに対し、最終的な獲得議席は、自民261(追加公認含む)、公明32、立憲96、共産10、維新41、国民11、れいわ3、社民1。
自民と立憲でみると、出口調査の精度で定評のあるNHKは自民を212~253議席と大きな幅で予測したが、結果はその上限を8議席も超えた。また、立憲についてもNHKは幅を広げて99~141と予測したが、現実は下限をさらに3議席下回った。
民放各局も午後8時の段階ではそろって自民苦戦を予測。フジテレビは「単独過半数割れか」と速報して与党の危機感をあおった。他局は自民単独過半数確保を予測したものの、一番多い数字を予測したテレビ東京でも240議席で、結果とは程遠い数字だった。
自民、立憲両党以外の政党については、「おおむね予測の範囲内」だったが、肝心の自民、立憲両党の結果が「予測と正反対の勝ち負けの逆転」(選挙アナリスト)となったのが今回の特徴。これが、開票以降の各党幹部の反応が迷走した最大の原因だ。
NHKの予測の範囲からもはみ出す「ありえない事態」
これまでも、開票開始時での獲得議席予測が結果と異なるケースはあった。ただ、ほとんど誤差の範囲にとどまり、全体の情勢が逆転するケースはなかった。とくにNHKの予測の範囲からはみ出したのは「ありえない事態」(選挙アナリスト)とされる。
そうした中、両党リーダーの岸田文雄首相(自民党総裁)と枝野幸男立憲代表の表情や反応も時間とともに変化が際立った。
岸田首相は開票前の段階から午後9時ごろまで「単独過半数割れという最悪の事態も覚悟し、インタビューで釈明するための発言要領を周囲と相談していた」(側近)とされる。しかし、深夜から未明にかけて絶対安定多数確保も視野に入ると、「国民の信任を得た」との勝利談話に変わった。
対照的に、枝野氏は当初の勝利を前提とした得意げな反応から、深夜には憔悴した表情に一変。未明に「敗北宣言」を余儀なくされた段階ではなお「一定の戦果はあった」と繰り返したが、最終的には敗北の責任を取る形での代表辞任に追い込まれた。
端的に言えば、衆院選という政権を懸けた戦いを受けて、自民、立憲の2人のトップリーダーが、開票からわずか数時間の開票速報の間に「天国と地獄の通路ですれ違う」(首相経験者)という前代未聞の事態となったのは間違いない。
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