勝者なき総選挙に見た「来夏の参院選」勝敗のカギ 単独過半数を確保した自民党も安泰ではない

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自民党は単独過半数を上回る261議席を獲得したが、公示前からは15議席減らした(写真:JMPA)

10月31日投開票の総選挙は、決定的な勝者のいない戦いだった。就任間もない岸田文雄首相は、新型コロナウイルス対策の不手際が続いた歴代政権に対する逆風の中で大敗も予想されたが、結果は15議席減で踏みとどまった。ただ甘利明幹事長の選挙区での敗退と辞任といった痛手を負った。

共産党などとの候補者一本化を進めて政権交代を訴えた立憲民主党も議席を減らした。維新の会は躍進したが、政権を狙うにはほど遠い。全国の選挙結果から見えてくるのは、コロナ禍で苦しむ国民の「現状を変えてほしい」という叫びだ。その声に応えられるリーダーを選び、政策に反映させられるか。来年夏の参院選に向けた与野党の論争こそ「真の勝者」を決める場となる。

がけっぷちの総選挙だった自民党

自民党にとっては、がけっぷちの総選挙だった。コロナ危機の中で昨年夏に安倍晋三首相が退陣。後継の菅義偉首相は当初、人気を博したが、コロナ感染の第4波、第5波に有効な手が打てなかった。病床の逼迫で自宅療養中に容体が悪化し、命を落とすケースが続出。ワクチン接種は、大号令をかけて進めたが、結果が出るまでには時間がかかった。菅氏は7年8カ月の官房長官在任中に、官僚の人事権をフルに使って霞が関の官僚たちを支配してきたが、コロナに「人事権」は効かなかった。

菅政権が行き詰まったのは、コロナ対策の中身と伝え方の両方に問題があったからだ。ワクチン接種にエネルギーを注いだ反面、病床確保や医師・看護師動員のための法改正などは遅れた。給付金の支給など経済支援も十分とは言えない。

さらに菅氏は、国民から直接、要望を聞き、政策に生かすのは不得手だ。メディアを通じた記者会見でも、原稿の棒読みが多く、国民にメッセージは伝わらなかった。内閣支持率は急低下し、菅氏は衆院の解散・総選挙で局面を打開しようとしたが、かなわず、退陣に追い込まれた。

自民党総裁選を経て後継首相に就いた岸田氏にとって、総選挙は「後のない戦い」となった。メディアの世論調査では、自民党苦戦の予想が相次いだ。野党側は立憲民主党を中心に国民民主党や共産党などと候補者を一本化。自民候補対一本化の立憲候補という構図が多くなり、自民党は大幅に議席を減らすとの見方が広がった。

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