G20で日本“例外扱い” 英新政権と菅政権の差

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G20で日本“例外扱い” 英新政権と菅政権の差

カナダのトロントで6月26~27日、主要20カ国・地域(G20)首脳会議が開かれた。先進国は「2013年までに財政赤字半減、16年までに政府債務の対GDP比を安定化または低下させる」ことに同意した。

が、政府債務残高がGDP比181%と最悪の日本は、“例外扱い”とされた。これは、市場や外部からのチェックが働かない事態に陥ったことを示す。日本の国債は95%が国内貯蓄で消化されている。当面はデフォルトが懸念される事態となっても、増税かインフレで日本国民がツケを負うにすぎない。海外の投資家に影響が及ばないため、蚊帳の外に置かれたのだ。

菅政権は6月22日に閣議決定された「財政運営戦略」で、財政再建と財政出動の二兎を追い、「増税しても使い道を間違えなければ成長する」とする。使い道には社会保障・福祉のほか、思いつくかぎりのテーマが並ぶ。一方で、自民党政権の非効率な公共投資を批判している。

だが「道路や橋から、医療や介護に変わるだけ。形を変えた公共事業にすぎない」(みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト)。「大きな政府」は非効率で、必要なところへ資金は回らず、新たな利権を生むだけだ。カネを使わずに規制改革で民間の力を引き出すべきだ。

英国は真逆の発想

同じく6月22日、英国も緊急予算案を発表。実は過去半年間、日本と英国のソブリンCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の価格は、ほぼ同じ動きをしていた。

キャメロン新政権は、菅政権と異なりクリアだ。ニッセイ基礎研究所の伊藤さゆり主任研究員は「英国は増税よりまず歳出削減」と評する。子ども手当の凍結、公務員給与の凍結ないし引き下げ。全省庁の25%予算カット。公的年金の支給開始年齢の引き上げも検討する。

付加価値税は17・5%から20%へ引き上げるが、これは増税なら付加価値税が成長をそぐ効果が最も小さいと考えるからだ。低所得者に影響が大きい食料品は対象外で、所得税はむしろ課税最低限度額を引き上げる。企業の活力回復へ、法人税は引き下げ、成長による税収増を図る。

「サッチャー政権への反動から厚い手当や雇用保険など社会保障費が膨張したが、民間活力をそぎ成長を阻害したという反省がある。新政権は細かい見直しに着手している」(伊藤主任研究員)。

仏と独も持続可能性を考えた見直しに着手している。菅政権は、先に少子高齢化を経験した欧州からは周回遅れ。すでに財政が悪すぎる日本が、過去の欧州の轍を踏むことは命取りになる。

(大崎明子 =週刊東洋経済2010年7月10日号)

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