「液体ミルク」を自治体が「防災備蓄」する深い意義 豪雨で孤立の島根県飯南町は「道の駅で備蓄」

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液体ミルクとは、粉ミルクのような調乳を必要としないミルクのこと。2016年の熊本地震の時に注目を集めました(写真:Mai/PIXTA)
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赤ちゃんはとてもかわいいが、0歳児の育児は過酷だ。

3時間おきの授乳、オムツ替え、呼び泣き、黄昏泣き、夜泣き……ありとあらゆる赤ちゃんの要望に対応し、予防接種や検診、そして日常生活も回さなければならない。

少子化対策のためにも、子育てしやすい社会、環境づくりが急務だと言われて久しい。2019年3月に発売された乳児用液体ミルクは、子育て中の人が待ち望んでいた画期的な商品だった。

発売から2年半が経ち、現在では江崎グリコ、明治、雪印ビーンスタークの3社が発売。ドラッグストアや一部の自動販売機でも気軽に買えるようになっている。9月28日には乳児用ミルクにとどまらず、幼児用(フォローアップ)液体ミルクも明治から販売されるなどますます商品ラインナップに広がりを見せている。

だが、日本での液体ミルク販売は一筋縄ではいかなかった。本稿ではその背景について振り返り、地震や台風など自然災害が増えている今、防災備蓄の必要性について改めて考える。

そもそも液体ミルクとは?

液体ミルクとは、粉ミルクのように調乳を必要としない、母乳の代わりになる乳児用のミルクのこと。

専用アタッチメントをつけることで、市販の乳首を取り付けることができる(写真:明治)

粉ミルクは殺菌のため熱湯で調乳したうえで、人肌まで冷まして飲ませないといけないが、液体ミルクは常温で保存して、そのまま哺乳瓶に移し替えるだけで飲むことができる。メーカーによっては専用のアタッチメントや乳首が出ており、それらを使えば哺乳瓶に移し替えることなく授乳することも可能だ。

日本で初めて液体ミルクを発売した江崎グリコの2020年3月発表の調査によると、1歳までの子を持つ人の約9割は液体ミルクを知っていて、約4割が利用経験もある。しかも、夫の授乳経験は、液体ミルク未使用世帯が27.8%なのに対し、使用世帯は40.1%にのぼる。

「液体ミルクは、粉ミルクと異なり調乳が不要なため、いつでも、どこでも、誰にでも簡単に赤ちゃんにミルクを飲ませることができる。そのため、母親だけでなく、父親や祖父母などが、日中・深夜や自宅・外出先などを問わず、あらゆる場面で育児に参加しやすくなる」というのは江崎グリコのコーポレートコミュニケーション部の青山花氏。

外出先で粉ミルクを飲ませようとすると、場所によってはお湯と湯冷ましの2種類を水筒に入れて持ち歩かないといけないが、液体ミルクはこれ1つでOK。夜中にミルクを作る時は、お湯を沸かして、冷まして……とあげるまでに最低10分程度かかるが、液体ミルクなら10秒だ。

利用した人たちからも、「外出先で作る手間が省ける」「すぐ飲ませられて楽。パパも担当できるのでうれしい」「自分が疲れているときも助かる」「夜のミルクをあげる際も便利」と負担軽減を喜ぶ声が寄せられているという。

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