訂正を迫られた日経平均は再度3万円を回復する 足元の値固めが終われば年末までに上昇へ

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海外要因については、短くまとめると以下のようになる。一時はアメリカの連邦債務上限引き上げ問題が株価の不安材料とされた。しかし10月6日には、共和党上院のトップである、ミッチ・マコーネル院内総務が、債務上限を12月までの支出予定分を含む形で延長することを提案し、民主党の上院トップのチャック・シューマー院内総務が、その提案で合意したと7日に明らかにした。

再度上限問題が取りざたされても「達観」を

そもそも、債務上限問題は「茶番」だ。上限が引き上げられず、連邦政府が資金繰りに窮し、国債の利払い資金も手当てできなくなって、アメリカの国債がデフォルト(債務不履行)に陥っても、与党も野党も喜ばしくはないはずだ。

ではなぜ債務上限の引き上げや凍結がすぐに行われないかといえば、「政争の具」になってしまうからだ。過去からずっとそうだが、野党側が「債務上限の引き上げに合意してほしければ、わが党が主張しているこの点を飲め」と与党に迫るという形だ。今回は、民主党が計画している巨額の経済対策予算が標的となっている。

野党の共和党側から短期間の上限延長の提案がなされたわけだが、これは共和党側も債務上限引き上げに応じない姿勢をずっと示し続けると「足を引っ張っているのは共和党だ」と攻撃されかねないため、「自分の党は悪くない」という形づくりをしたということだろう。

今後も12月が近づくと、市場が再度債務上限問題を取りざたして騒ぐかもしれない。しかし、しょせんは政党間の交渉道具にすぎず、また期限が近づけば延長や凍結がなされるだろう、と達観していればよいだろう。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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