「稼ぎが少ない方が家事をするのは当然」の落し穴 「無償労働の価値」を知らない人が認識すべき事

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Uさんの夫の稼ぎは、Uさんの無償労働によって支えられている現実が明らかになりました。Uさんの夫は、自分のほうが長く働いて多く稼いでいるので、家事は手伝い程度でいいと思い込んでいたのが、無償労働を入れると妻のほうが労働時間が長いことに驚き、申し訳なさそうにしていました。

「世帯売り上げ」を確保するためにできること

そこで、世帯売り上げを減らさなくてすむために、どうしたらUさんの不公平感を払拭できるのかを話し合おうということになりました。このように、さまざまな材料をテーブルに乗せ、夫も自分事として考えるようになったことで、Uさんの気持ちはほぐれていきました。

その後、Uさんは家事の見える化をして、夫もともに担える方法を考えたり、便利な家電をリストアップしたり、家事サービスの外注を検討したり、地方に住む親に頼んで仕事の繁忙期など1カ月のうちの3日から1週間くらい来てもらえないかなど、可能かどうかは深く考えず、とりあえずアイデアを口に出して話し合ってみたそうです。

家事の外注は贅沢だと思っていたUさんでしたが、自分がパート勤務に転換することで月に十数万も収入が消えてしまうことを考えれば、必要経費だと割り切れるようになりました。

実は、Uさんが前向きになれたのには、もう1つの理由がありました。将来予測を行うときに使った「ライフプラン表」です。3歳の子どもは10年後には中学生になっているという事実、そして今の仕事を続けた先の10年後の自分、パート転換した10年後の自分を想像してみたそうです。

そして、今の生活を続けることの困難さを口に出してみたとき、職場での困難さは自分の思い込みかもしれない、単に逃避しているだけかもしれないと気づきました。子どもが生まれるまでの自分のキャリア、そしてこれから30年以上続くことになる職業生活を考えたとき、「ここでは終われない」という気持ちが湧き上がったといいます。

家族のあり方や働き方など、1人ひとり価値観は異なります。今だけではなく、将来も展望しながら、自分はどのような暮らしを望むのか、その暮らしを実現するためには、どんな方法があるのか、1人で抱え込まず、パートナーや職場の人、親族、ファイナンシャル・プランナーなど周りの人も巻き込んで、話し合いや試行錯誤を重ねていってみてはいかがでしょうか。

内藤 眞弓 FP&コミュニティ・カフェ代表

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生命保険会社で13年間営業に携わる。独立系FP会社「生活設計塾クルー」で相談業務を行う。「医療保険は入ってはいけない!」など著書多数。

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