「まるのうち保健室」を三菱地所が立ち上げた背景 丸ノ内エリアで働く女性に向けた取り組みとは

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さらに、もう1つのプログラムとして、女性専用検診クリニック「クレアージュ東京 レディースドッククリニック」と連携し、女性ならではの悩みに特化した「まるのうち保健室オリジナル健診プログラム」も開発した。

会社の健康診断でも婦人科検診をオプションで付けることもできるが、異常あり・なしで終わってしまうものがほとんど。

「これまでのまるのうち保健室では、妊活や出産など女性のライフイベントを知ることに重点を置いてきたが、一説によると、ライフイベントに沿った女性の不調の多くが女性ホルモンに起因していると聞く。次のステップとして、女性ホルモンの理解が必要になる」(井上氏)

なぜ三菱地所がこのような取り組みをするのか

今回のプログラムでは、体組成測定のほか、血液検査では鉄代謝や糖代謝なども測定。通常の血液検査では出てこない隠れ貧血も判定可能。オプションで卵巣年齢を調べるAMH(抗ミュラー管ホルモン)なども測定できる。

経膣エコーでは重い月経痛の原因になりうる子宮筋腫や子宮内膜症も検査できるほか、助産師とのカウンセリングもある。

こちらも参画企業の社員は無料で受診でき、個人受診も有料で受け付けている(10月2日まで)。

まるのうち保健室での骨密度測定の様子(写真:三菱地所提供)

企業側には、個人を特定することなく、統計データとしてフィードバックするため、参加者も個人情報が守られる。

なぜ、不動産業を営む同社が、シンクタンクのような調査をしたり、各企業に代わって福利厚生のような取り組みを行っているのだろうか。

「三菱地所が目指す街づくりは、ビルなどのハード面に限らず、近視眼的ではなく、社会課題をどう解決していくかが根幹にある。女性活躍推進の指標として、女性管理職を何%にすると掲げるのも大切だが、2014年の調査結果を見て、もっと『個』に寄り添ったものが必要だと感じた」(井上氏)。

少しずつではあるが、女性活躍推進やダイバーシティーが浸透し、世の中の空気は変わってきている。

しかし、個人でできることには限界があり、企業ができることにも限度がある。三菱地所の取り組みは、社会環境を変えるうえで、行政とはまた違った旗振り役として今の時代に求められているものだろう。

吉田 理栄子 ライター/エディター

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よしだ りえこ / Rieko Yoshida

1975年生まれ。徳島県出身。早稲田大学第一文学部卒業後、旅行系出版社などを経て、情報誌編集長就任。産後半年で復職するも、ワークライフバランスに悩み、1年半の試行錯誤の末、2015年秋からフリーランスに転身。一般社団法人美人化計画理事。女性の健康、生き方、働き方などを中心に執筆中。

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