孫泰蔵が「事業計画は起業の害」と考える深い訳 ビジネスにおけるクリエイティビティの重要性
計画に縛られていては、みちくさなんかできなくなるわけです。秒刻みで行程を決められた旅行みたいなものです。「この道、何か面白そうだから入ってみたいな」「この店、変わったものが売ってるな」と思って覗こうとしても、「そんな時間ないです。もうバスが待ってます」と言われて次のバスに乗らなきゃいけない。何のための旅なんですかっていう。
それはもはや旅行ではありません。予定通り、時間通り、交通機関を乗り換えて移動しているだけ。ただの「移動」であり、交通機関を乗り継ぐという「作業」でしかない。
何のために起業するのか。誰のためにビジネスをするのか。そこを置き去りにして計画を守っても意味がないだけでなく害にすらなりえると思います。
後半は計画の鬼になる
もちろん、僕は計画そのものをすべて否定しているわけではありません。プルーフ・オブ・コンセプトができて、みんなが「これ良い!」「これを多くの人に届けたい!」という段階になれば、次は「なるべく安く作る」「たくさん作る」「スケールさせる」といったフェーズに入ります。そこからはプランニングをしないとうまくいきません。
そのフェーズに入ったら逆に、プランニングこそ命です。僕自身「プランニングの鬼になれ」「計画が甘い」と徹底的にはっぱをかけまくります。
でも、アーリーステージでは事業計画書とか持ってこられても、「君たち、まだ何もできてないじゃん」としか言いようがありません。自分たちで計画を立てて、ダメなものを作っても試行錯誤を許さないように自分たちで縛ってしまっていては、起業においてこれほど残念なことはないといえるでしょう。
起業家の使命は、今あるもののちょっとした改善ではなく、今までになかった新しい商品やサービスを生み出すことです。そのためには創造的な思考や閃きが求められますが、それは計画を立てて、その通りに達成できるようなものではありません。時間を忘れて没頭して考えたり、好奇心の赴くままに活動範囲を広げていく中で、偶然何かを見つけたり、インスピレーションを得たりして、たどり着くものなのです。そうした過程を経て生まれたものでないと、世の中を変えることはできないでしょう。
僕が起業において「事業計画は邪魔」「仕事じゃないんだぞ。こちとら遊びなんだ。真剣にやれ」と言っているのは、こうした理由があるからです。
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