文科省の「ロジスティクス無視」で疲弊する学校 教員採用試験の倍率低下に始まる悪循環

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出所:文科省「令和4年度 概算要求のポイント」

答えは約2万校である(正確には1万9526校、文科省「令和2年度 学校基本調査」)。なので、プラス2000人では10校中1校で1人増えるかどうか。4年間で8800人程度増やす計画のようだが、それでも、2校で1人増えるか増えないかというものだ。

35人学級については、以前から私は申し上げてきたが、持ち授業数は変わらないので、多忙解消には大きくはつながらない※3

この資料の後段には「学校における働き方改革や複雑化・困難化する教育課題への対応」とあるが、微々たる人数の予算要求である。

教職員増は大きな財政負担となるので、毎年財務省は消極的であるし、むしろ減らそうとしている。文科省はその財務省相手によく奮闘していると評価できるかもしれないが、概算要求の段階で上記のとおりなので、文科省は本当に学校(とりわけ小学校)の窮状に向き合おうとしているのか、私には見えてこない。

文科省はこんな教育を推進したいという理想は掲げるのだが、「兵站(へいたん:ロジスティクス)無視」だと、これまでもたびたび批判されてきた。例えば、教育行政の専門家である青木栄一教授も著書の中で、文科省は「『政策実現手段』に無頓着である」「資源制約を考慮せず前線の努力に丸投げする」(『文部科学省 揺らぐ日本の教育と学術』中公新書)と評している。

この悪い癖がコロナ禍でさらに教育現場を苦しくしているような気がしてならない。

文科省だけを悪者にしたいわけではない。私は著書や研修などで何度も繰り返しているが、例えば、学校の多忙の問題は、学校裁量や教育委員会の施策で改善できるものも多い。何でも国頼みとする姿勢は問題だ。

とはいえ、各地の学校が回らないような状況に文科省は無策でいていいとも思わない。「ロジスティクス無視」の汚名をそそぐ行動を起こしてほしい。

※1 オンライン授業とは、ここでは、ウェブ会議などを使って同時双方向性のある授業をイメージする
※2 念のため申し添えると、児童生徒の夏休み=教職員も休みではない。とはいえ、授業がびっしりある普段と違って、子どもたちの長期休業中は先生たちは多少ゆとりがある
※3 妹尾昌俊「【少人数学級の影、副作用】先生の忙しい日々は改善する? 悪化の可能性も

(注記のない写真はiStock)

執筆:教育研究家 妹尾昌俊
制作:東洋経済education × ICT編集チーム

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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