自民党総裁選「テレビ」の報道がやたら過熱する訳 最もわかりやすい権力闘争に視聴者の関心集まる

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ところが、自民党の総裁選は、選挙報道に際してそこまでの〝しばり〟はない。

政権政党であるから、一応「公職選挙に準ずる」扱いにはなるが、候補者密着取材を放送するのも可能である。また番組内で「票読み」をすることも構わない。

「あの派閥が支持する候補を変えたようだ」「〇〇氏は苦戦していて途中で降りるかも」といった詳しい予想や内情の話も放送できる。

つまりテレビにとって、自民党裁選は「国政選挙なみの関心事」でありながら「報道の制約が少ない」という題材である。

「次の総理を選ぶ、フルサイズの総裁選」は2008年以来

そして今回の総裁選は党員投票も行う「フルサイズ」で行われる。

昨年は、安倍前首相の突然の辞任に伴う任期内の総裁選だったため、国会議員のみの投票だった。

党員投票があることで、ちょっとした「国民投票」の様相も呈してくる。選挙選でさまざまな形でのアピールをする候補者を、毎日テレビで見ることになるだろう。

自民党とすれば、誰が勝つにしても政党として「テレビの露出」は増えるという、願ったりかなったりの状況になる。

今回と同様のフルサイズによる総裁選は2018年以来となる。

この時は安倍晋三氏が「3選」を目指して石破茂氏との一騎打ちを制したのだが、現職である安倍首相の優位は動かず、「次の総理が決まる!」というダイナミズムには欠けていた。

その前は2012年で、安倍氏が石破氏と石原伸晃氏らとの激戦を制して、総裁に復帰したのだが、この時は民主党政権であり、自民党は「野党」だった。この時点では安倍氏は野党・自民党の総裁になったにすぎない。

この総裁選の後の総選挙で自民党が圧勝して、安倍氏は首相に返り咲き長期政権となっていくのだが、この時の総裁選は「次の総理を選ぶ」ことと直結してはいなかったのである。

「次の総理を選ぶ、フルサイズの総裁選」となると2008年まで遡ることになる。

この時は福田康夫首相の辞任に伴い、麻生太郎氏、与謝野馨氏、小池百合子氏、石原伸晃氏、石破茂氏が出馬した。

5候補による選挙戦が行われて、街頭演説でのキャラクターが党員の支持を得るなどして、麻生氏が勝利、総理の座に就いた。

1年ごとに首相が代わり自民党政治への行き詰まりが感じられた時代だったが、総裁選の報道はやはり盛り上がった。

「伝える側」もテンションが上がり、視聴者も興味深く報道を見て、視聴率は上がっていった。

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