財政危機で足並み乱れる金融規制論議
BIS(国際決済銀行)のバーゼル委員会では自己資本新規制の準備が進められている。金融機関の抱えているリスクの捕捉を行い、リスク量を抑制すること、リスクをカバーするために必要な自己資本の質や量、流動性を強化することが決まっている。
ヘッジファンドや格付け会社に対する規制の導入も進められ、各国において「システム上重要な金融機関」(SIF)に対する監督体制の整備や報酬規制も動き出している。
ここへ来て議論が分かれているのは国際的に活動しているSIFが危機に瀕した場合の、破綻処理の枠組みの問題だ。いわゆる、“トゥー・ビッグ・トゥー・フェイル”(大きすぎて潰せない)という問題をどう考えるかである。大手金融機関に対して税金が使われた反省から、欧米各国とも「大きくても潰す」としている。だが、問題はシステミックリスクをどう抑えるか、破綻処理に伴う費用をどのように金融機関に負担させ、どのように使うかだ。
制度がすでに整っている日本や、預金保険で十分に対応できるとしているカナダは、新たな制度を国際的に強制することには反対している。また、米国やEU(欧州連合)、英、仏、独の金融セクターに対する課税(米国は手数料)案も徴収の対象はリスクアセットか、あるいは利益か、取引かなど論点が分かれる。
さらに、徴収した資金を破綻処理のための基金に組み入れる米国やドイツに対して、英仏では一般会計に組み入れるという案もあり、財政赤字の問題と絡んでキナ臭くもなっている。徴税権の問題でもあり、各国の任意とならざるをえないだろう。
デリバティブ規制でも考え方は分かれている。ソブリンCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)がソブリン危機をあおったとの認識から、独仏主導でEUがCDSのカラ売りを禁止できる案を検討しているのに対して、米国は市場を歪めるものだとして、まったくくみしない。