苦境Jクラブが抱く「ライト層消失」の強い危機感 東京オリ・パラに長引くコロナ禍…打開策あるか

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「埼スタと駒場では施設面で大きな差があります。例えば、大型映像装置のクオリティーが違うので普段どおりの演出ができませんし、LED看板もないためパートナー企業の広告露出も難しくなります。VIP席も足りないので、サービスが著しくダウンすることになる。関係先には事情を説明して協力をいただきましたが、埼スタの設備や運営に慣れている方々にはご迷惑をかけることになってしまいました。

駒場のほうが運営費は若干安いですし、さいたま市も何度かスタンドを改修したり、Jリーグ基準の照明を設置したりと努力をしてくださり、大変感謝していますが、パートナー企業や観客へのサービス面が低下するのは厳しいですね。仮に5000人制限が続いたとしても、埼スタ中心というのは変わらない思います」と競技運営部長の白川潤氏は複雑な胸中を打ち明ける。

観戦習慣がなくなることへの危機意識

浦和は本社が埼スタ内にあり、五輪期間はADカード(許可証)がなければ出入りができない状況だったというが、無観客で閑散とした本拠地周辺の空気はやはり残念に映ったようだ。

「U-24日本代表の準決勝・スペイン戦と3位決定戦・メキシコ戦が埼玉で行われたのに、残念ながら無観客になってしまいました。あの熱戦を生観戦できる環境だったら、『次はレッズの試合を観に行ってみたい』と思った方も少なくなかったと思います。サッカー、Jリーグを盛り上げる機会が失われたことも、われわれにとっては痛手。『週末にはスタジアムに行く』ということが生活の一部だった方もその習慣から遠ざかり、だんだん関心が薄れていくのではないかという不安もあります」と白川氏もFC東京、横浜同様の懸念を口にする。

Jリーグにとっては、今回の東京五輪でダイレクトな経済効果を得られなかったばかりか、サッカー機運向上のチャンスも逃した。そのうえで、コロナ禍による逆風が吹き荒れているのだから、本当に厳しい。

本拠地を空けていた上記のクラブは8月末以降、順次、ホームゲームを実施できる環境に戻るが、観客制限が撤廃されるのはまだまだ先だろう。ワクチン接種が進み、ウィズコロナに舵を切ったイングランドでは超満員のサポーターが入っている。日本も早くそうなるように検査体制の整備や感染対策の徹底を推進しつつ、各クラブの努力がより一層、求められるところだ。

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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