苦境Jクラブが抱く「ライト層消失」の強い危機感 東京オリ・パラに長引くコロナ禍…打開策あるか

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「コロナ流行から1年半が経過し、これまではコスト削減を中心に実施してきましたが、観客制限の期間が長引けば長引くほど、スタジアムから足が遠のいてしまう人が多くなります。それに歯止めをかけるべく、今一度、認知度を高める取り組みをする必要があると切実に感じています。

SNSもツイッター、インスタグラム、Tiktokなど取り組んでいますが、Tiktokでは試合前に対戦相手の選手とフレンドリーに話している動画にライトユーザーが反応したりと、新たな発見もありました。クラブ内でも若手スタッフの意見をこれまで以上に聞いたりして、とにかくいろんなことにトライしてみることが苦境打開の一歩になると考えています」と川崎氏は意気込みを新たにする。

オンラインに注力する横浜F・マリノス

コロナ禍になってスタジアムに足を運ばなくなった潜在的ファンとの接点を増やす取り組みは、横浜F・マリノスも注力している部分だ。彼らは最初の緊急事態宣言が発令された昨年4月、他のJクラブに先んじて「Stay Home with F・マリノス」と題してオンラインイベントを開催。8月には「横浜F・マリノス トリコロールフェスタ2020」を実施。オンライン上での選手とファンの新たな交流モデルを作り、反響を得ている。

さらに、2021年からは会員制サイト「TRICOLORE+」を発足させ、公式オーディオコンテンツ「SPEAK OUT!」では現役選手の水沼宏太をMCに据え、毎回ゲストの選手やスタッフとトークを繰り広げるというサービスも実施。好評を博しているという。「オンラインや動画を使った多種多様なコンテンツでファンの入口を増やす」という意識は、FC東京を超えるものがあるかもしれない。

こうした取り組みに尽力するのも、7万2327人収容の日産スタジアムで5000人しか観客を入れられない環境を深刻に受け止めているからだろう。オリパラ期間は約1万5000人のキャパシティーのニッパツ三ツ沢球技場で4試合を実施。多少なりともコスト削減が図られたと見られるが、コア層以外のファンとの絆を断ち切らないようにしなければ、先々のクラブ発展は難しい。大規模スタジアムを持つクラブの悩みは深いのだ。

2019年までJリーグ観客動員1位だった浦和レッズも似たような環境にいる。7~9月上旬にかけては埼玉スタジアム(略称=埼スタ)が使えず、リーグ2試合、カップ戦2試合の合計4試合を旧メイン本拠地の浦和駒場スタジアムで実施。観客上限5000人の環境下だったため、6万3000人収容の埼玉よりも2万1500人の駒場を使ったほうがスムーズではないかと思われたが、意外とそうでもなかったという。

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