苦境Jクラブが抱く「ライト層消失」の強い危機感 東京オリ・パラに長引くコロナ禍…打開策あるか

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2019年のFC東京の入場料収入は11億400万円だったが、コロナ禍の2020年は3億1400万円に激減している。クラブとしては、スポンサー営業やグッズ販売強化を推し進め、減収幅削減努力を続けているが、約8億円ものマイナスを埋める術はそうそう見つからない。

コスト削減にも限界があるうえ、コロナ感染状況の改善がなかなか見込めないため、観客上限の引き上げも見えてこない。1999年にJリーグ参入以降、これだけの苦境に直面するのは初めてと言っていいだろう。

「それ以上に懸念しているのが、過去に1~2回観戦歴のあるライト層の観客との接点が少なくなっていることです。上限5000人であれば、コア層のサポーターでチケットは完売になるのですが、スタジアムに来場される以外の方とは試合での接点がなくなってしまいます。

2019年は1試合平均3万1540人を動員しましたが、半数以上がライト層。JリーグIDに登録いただいている14~15万人のうちの8割以上がそういった層です。だからこそ、絆を作らないといけない。クラブ全体として知恵を出し合っています」(川崎氏)。

ライト層との接点を作る布石

その布石の1つが、昨年から手掛けているのが、試合日に実施している「青赤パークオンライン Before The Match/After The Match presented by めちゃコミック」などのユーチューブ配信。試合会場には足を運べないものの、少しでも興味を持ってくれる人が気軽に接点を持てるように試合開始の2時間前から配信し、ファン・サポーターとの接点を多く持てるように取り組んでいる。

2つ目はJリーグIDを基づいたメール配信だ。過去のグッズやチケットの購入履歴、公式HPの閲覧やDAZNの加入状況などを見ながら、顧客の傾向・志向に沿った案内を送っている。これは大半のクラブが実践しているが、FC東京としてもさらにテコ入れを図ったという。

調布駅の装飾された階段(写真:FC東京)

3つ目は新宿、渋谷、調布などFC東京に関心を持ちそうな人の目につきやすい主要駅での告知。9月のホーム4試合に関しては「TOKYO IS COMING BACK」と銘打ったポスターを京王線全駅で掲示。調布駅の構内や階段をFC東京カラーに装飾。

さらに新宿区と連携して、コロナ感染対策やワクチン接種促進を啓発する動画に選手が出演する。それが新宿・アルタビジョンなどに流れるという形だ。渋谷で若者やサッカー愛好家が森重真人や小川諒也ら日本代表経験者の選手の姿を目の当たりにすれば、多少なりとも関心度がアップするだろう。

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