《プロに聞く!人事労務Q&A》退職時の年次有給休暇請求を認めなければなりませんか?

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2.職場のモチベーション管理

次に、Aさんのように、育児休業終了後に年次有給休暇をすべて消化して、その後に退職をしてしまう従業員がいた場合に、他の従業員のモチベーションへの影響について考えてみましょう。

育児休業制度は、仕事と家庭の両立しやすい職場づくりと、企業にとって優秀な人材の確保・育成・定着などを目的にしているものですから、今回のように、育児休業の終了と同時に退職することは、制度の考え方に沿うものではないかもしれません。

そこで、どうして、Aさんが今回のように退職の意思を抱くことになったのか。その理由を、丁寧に確認してみてはいかがでしょうか。Aさん自身も育児休業を申し出たときには、現在の職場に長く働きたいと思っていたのかも知れません。何かの理由で、退職せざるをえなくなったのではないでしょうか。そして、退職に当たり、Aさん自身が権利として所持している年次有給休暇を消化したい、と考えたのでしょう。

職場の他の従業員に対しては、Aさんの個別の事情をヒアリングし、気持ちを酌み取ったうえで、Aさんの個人情報の保護に配慮しながら、他の従業員の誤解や動揺などの悪影響が出ないように会社からきちんと説明をしておくことが必要と考えます。

また、Aさんが復帰したときに予定していた業務については、職場の他の従業員に過重な負荷がかからないように人員配置や要員確保などの配慮や措置により対策を講じることが必要となります。

Aさんの退職と年次有給休暇の取得はやむをえないものとして、今後のことを踏まえて、職場の他の従業員に過重な負荷がかからないような労務管理をしていくことが必要と思います。

半沢公一(はんざわ・こういち)
1980年東洋大学経済学部卒業。IT関連会社で営業、人事労務及び派遣実務に従事した後、91年に独立し半沢社会保険労務士事務所を開設。就業規則をベースとした労務相談を得意とする。企業や団体での講演・講義も多い。現在、東京労働局紛争調整委員会あっせん委員、東京都社会保険労務士会常任理事等を務めている。著書多数。


(東洋経済HRオンライン編集部)

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