埼玉・小川町メガソーラー、希少野生動物への懸念 予定地で絶滅危惧種のミゾゴイとサシバが繁殖

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今年4月、野鳥調査チームの調査に参加した日本野鳥の会会長、上田恵介・立教大学名誉教授(鳥類学、埼玉県在住)は「事業は広大な面積の森林伐採を予定しており、最も希少性の高いミゾゴイ、サシバへの影響は深刻だ。現実的には住めなくなるわけで、いなくなってしまう。影響を少なくする保全の具体策について準備書が何ら記述していないのは問題だ」と断じた。

ICレコーダーは、4つの古巣からほどよい距離で、かつミゾゴイの鳴き声をキャッチできる絶妙なポイントを選び、3地点に設置された(写真:鈴木邦彦氏提供)

環境アセス、注目される埼玉県や国の審査

国の環境アセス制度の手続き上、さいたま小川町メガソーラーは現在、どの段階にあるのだろうか。

事業者の小川エナジー合同会社は4月19日、環境アセス準備書を経済産業省に届け出た。公告縦覧や一般からの意見書の受付は終了。今年秋には埼玉県知事が経産省に意見書を提出。経産省は環境大臣の意見を聞くなどしたうえで、事業者に勧告を行う。

現在の仕組みでは、環境アセス制度により、事業実施にストップをかけられるわけではない。「環境アセス制度には事業の許可や認可をするという役割はない。あくまでも環境保全上の勧告を行うもの」(経産省)だからだ。

しかし、最近、太陽光発電施設の建設をめぐる地域住民との紛争が増えるなか、県や国に対し厳格な審査を求める声が高まっている。国は「再生可能エネルギーの導入促進を進めるためにも、自然環境への配慮や地域の合意形成を図らないと、迷惑施設のように見られてしまう」(環境省)と危機感を募らせる。

5月、地球温暖化対策推進法一部改正案の国会審議で梶山経産相は「事業者がガイドラインを守っていない場合には、認定取り消しもありえる」と答弁した。ガイドラインとは、固定価格買取制度により有利な価格で電気を売るために認定を受ける事業者向けの事業計画策定ガイドラインのこと。「稀少野生動植物の生息には十分配慮して発電設備を建てる場所の選定を行う」ことが推奨されている。

比企の太陽光発電を考える会代表で獣医師の小山正人さん(51歳)は、「この地域に残る里山の希少な生物や貴重な自然を守って未来に残してこそ、持続可能な社会をつくることができる。押し寄せてくる開発の波に乗る、もうそういう時代ではない」と強調した。

河野 博子 ジャーナリスト

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こうの ひろこ / Hiroko Kono

早稲田大学政治経済学部卒、アメリカ・コーネル大学で修士号(国際開発論)取得。1979年に読売新聞社に入り、社会部次長、ニューヨーク支局長を経て2005年から編集委員。2018年2月退社。地球環境戦略研究機関シニアフェロー。著書に『アメリカの原理主義』(集英社新書)、『里地里山エネルギー』(中公新書ラクレ)など。2021年4月から大正大学客員教授。

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