埼玉・小川町メガソーラー、希少野生動物への懸念 予定地で絶滅危惧種のミゾゴイとサシバが繁殖

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サシバの成鳥(写真:鈴木邦彦氏提供)
事業予定地の近くで生まれたヒナ(写真:鈴木邦彦氏提供)

事業者による調査、評価、対策のずさんさが浮上

事業者が調査を行い、作成した環境アセス準備書は、ミゾゴイ、サシバについてどのように記載しているのだろうか。

ミゾゴイについては、「調査の結果、合計で4つの巣が確認された」。ここまでは、野鳥調査チームの調査結果と一致している。文脈の前後から、事業者の調査で確認された4つの巣とは、いずれも昨年のものと思われるが、それがすべて、野鳥調査チームが見つけた「4つの古巣」と同じかどうかはわからない。しかし、準備書は、「巣の周辺を探索したが繁殖の痕跡は確認されず、今シーズンの巣の利用の有無は不明であった」と続けている。

これに対し、野鳥調査チームは、「事業者は今シーズンの繁殖調査を行わないまま、準備書をまとめた。最初から調査しないで済ませようとしたのではないか」と批判している。

事業者が環境アセス準備書作成に入る前、経済産業省の環境審査顧問会は、事業者側による調査計画書をベースにさまざまな注文を付けた。2020年8月の議事録によると、「重要な鳥類について、対象事業実施区域内での正確な生息状況の記述に努めてください」と述べ、ミゾゴイについては、「里地里山の生態系を代表する貴重種。注目度がかなり高い」として、「古巣やその利用の確認」を求めている。

事業者が経産省の顧問会の注文に従わなかった理由は、わからない。野鳥調査チームが独自の調査で「新巣」を見つけ、抱卵中と思われる親鳥を確認した地点は、実は事業予定地のど真ん中。そこでミゾゴイが繁殖していたとなると、計画区域の変更など厳しい対策の検討を迫られると考えたのだろうか。

一方、環境アセス準備書は、サシバについて、事業予定地の外の隣接地域にも生息していることや「移動能力が比較的高い」点に着目。工事の工程を調整し、工事車両が一時的に集中しないようにする措置をとれば「生息環境への影響は小さい」と述べている。これに対し、野鳥調査チームは「サシバの行動範囲の把握が不十分で、対策も不十分」と指摘した。

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