簡素化進む「葬儀」に新風を起こすカノンの挑戦 葬儀・弔いの新しい形「安置葬」とは一体何か

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ここで故人と親しい関係にあった人たちというのは、家族・親族だけではない。

「家族葬のデメリットは、血縁関係以外の方を呼ばなくなったことです。しかし、故人と生前お付き合いのあった方の中には、血縁関係以上に親しい方がいます。安置葬だと、そういう方も最期のお別れをすることができます」(三村さん)

カノンは、看護学校の空き校舎をリノベーションした葬祭施設である。そのため、部屋数が多く、大中小あわせて14室を貸し葬儀場としており、これらの部屋は、葬儀を行わない場合でも、安置室として利用できる。この部屋とは別に面会専用室も3室設けており、ここで面会するか、14の個室を安置室として利用するか、選択できるようになっているのもカノンの特徴だ。

カノンが「安置葬」を開始した2020年9月1日から2021年5月末日までの利用者数は、前年同期に比べ2.2倍となった。利用者数の内訳は、「安置期間中に2回以上の面会」が54%、「付添い・宿泊」32%、「面会1回」10%、「面会なし」4%の順。安置葬のコンセプトに沿った付添い・宿泊が約3分の1を占めており、故人と一緒に過ごしてお別れをしたいという人たちは比較的多い。

どのような遺族が利用するのか

では、付添い・宿泊(安置葬)を利用するのは、どのような遺族なのか、三村さんに尋ねた(故人・遺族の属性や発言内容などは、三村さんが遺族にヒアリングしたもの、遺族の許可を得て掲載)。

故人は80代の男性。妻と長女(40代)と3人暮らしをしてきたが、4年前から認知症が進み自宅近くの高齢者施設に入居。しかし、コロナ禍のため1年半近く家族に会えないまま、施設で突然体調が悪くなり逝去した。

自宅には連れて帰れないので、故人と一緒にいられるところを探し始め、カノンをテレビで見たことを思い出して長女が電話で依頼してきた。遺族の最大の希望は、故人と十分なお別れの時間を持つことで、6日間の滞在を希望した。

6日間というのは、火葬までの待機日数などはまったく関係なく、「娘さんたちは、施設に入居してもらったお父さんに、面会規制で1年半も会いに行かなかったことを、とてもつらく思っていました。そこで、1回面会に行く時間を1時間、週1回面会に行くとすると、1年半の面会時間は最低6日間と考えて6日にされた」そうだ。

最初の4日間は、妻、長女、次女、次女の夫、孫2人の6人が、ほぼ毎日のようにカノンを訪れ、故人の思い出話などをしながら、長時間、故人と一緒に過ごしていた。また、5日目は夕方、全員が揃って来館して食事をし、夜は故人の棺を囲むようにして宿泊した。

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