「Facebook卒業します」の背景にあるもの ニュースフィードの「CNN化」にうんざり

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同じ時期に1つの話題が流れ続け、強い主張とともに押し寄せる。コミュニケーション上のトラブルの有無にかかわらず、ニュースフィードが「関わりにくい場所」になっていることが、Facebook卒業の要因だと、話を聞いた2人は指摘していた。

もちろん、見たくない投稿は見ない、という機能はFacebookにある。そして見せたくない相手には見せない、という機能もまた存在する。しかし自分が一度は「友達申請」やその「承諾」ボタンを押して選んだ人から、同じ情報が繰り返されたり、小さな炎上(ぼや)を見かけるようになると、「果たしてそこは自分の居場所なのか?」と疑問を持っても不思議ではない。

モバイルメッセージアプリの進化も後押しに

冒頭で、連絡手段として優秀、という指摘があったが、メールアドレスや連絡先、名刺の管理などをきちんと行っていない人でも、Facebookのメッセージは名前と顔から調べて送ることができる。FacebookはWhat's Appというモバイルメッセージングの最大手を買収したが、自身も「Facebookメッセンジャー」というアプリを擁しており、SNSのユーザー同士、あるいはグループでのやりとりが可能だ。

先日筆者が東京で参加した1000人規模の講演の依頼もFacebookメッセージで届いたし、参加するプロジェクトではグループメッセージで議論が行われており、ビジネスでも活用できるコミュニケーションツールとしての側面もある。Facebookを卒業するという人も、アカウントを消さない理由はメッセージを受け取れるようにするためだ。

Facebookはメッセンジャーをメインのアプリから切り出して独立したアプリとした。しかもこのアプリがなかなか使いやすく仕上っている。Facebook卒業宣言の背景には、Facebookアプリをスマホから消してニュースフィードへの関与をやめても、使いやすいメッセンジャーアプリだけで十分コミュニケーションが取れる利便性が存在していた。

「誰が自分にメッセージを送ることができるか」という設定から、全く知らない人がメッセージを次々に送ってくるスパム状態に陥ることも現状はない。相手が信頼できるかどうかは、その人のプロフィールを見たり、共通の友人を探ることで理解できる。

またLINEのようにアカウントが乗っ取られて、謎のメッセージが届いたことも、今のところはない。メール以上に即時性があり、送受信する人の信頼性もプロフィールや共通の友人によって担保できるメッセージ機能は、Facebookのインフラ性を高めている機能であり、捨てられない要素といえる。

それだけに、独立した出来の良いアプリは、卒業組にとって、メインのアプリを削除するきっかけを与えてしまっていた。

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